活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2017.10/31 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(6)

酸化スズゾルに含まれている酸化スズが導電性か絶縁性か、あるいは結晶性か非晶性かは水を除去して酸化スズを取り出し分析すれば判明する。

 

ところが、ガラス基板に薄く塗布し自然乾燥させたところクラックが入り良好な薄膜を作ることができない。酸化スズゾルの営業担当から評価が難しいので苦労している、と説明を受けた。評価が難しい材料をどのように品質管理しているのか疑問に思ったが、指導する立場ではないので追及はしなかった。

 

何処かの大学の先生のご指導を受けたようだが、いい加減な先生に騙されたのだと思った。大学の先生の中には技術を理解せず適当なことを自信をもって説明される方もいるので注意しないといけない。

 

このゾルに分散している酸化スズが結晶かあるいは非晶かの判断については、ガラス転移点がないから結晶だと説明を受けたと営業マンは言った。どこの大学の先生か名前を出すと大学の名誉を傷つけるので書かないが、このような先生に指導を受けている学生がかわいそうに思えてくる。

 

高分子材料では、非晶質相はガラスと言ってもいいが、無機材料では非晶質体がすべてガラスとは限らない。ガラス相を形成しない非晶質物質も無機材料では存在するのだ。酸化スズゾルに含まれる酸化スズは絶対にガラスにならない。単なる非晶質体である。

 

ゆえに無機材料についてガラス転移点をもたないから結晶という判断は間違っている。ちなみに高分子の熱分析を行ったときにガラス転移点が現れないことが稀にある。

 

しかしそのような場合の対策については以前この欄で紹介しているのでそこを読んでいただきたいが、工夫すればそのような場合でも高分子材料では必ずガラス転移点を観察できる。

 

高分子は結晶化あるいはガラス化して固まるが、無機材料の中にはガラス化する組成とガラス化しない組成が存在することは、材料を扱う実務で重要な形式知である。この形式知をベースに積み上げなければいけない高分子に関する経験知が存在する。

 

また、実務ではこの形式知だけでは問題解決できない現象も多くあるが、形式知をベースにせず経験知を積み上げると、アカデミアとの議論がかみ合わなくなる。英語が公用語となっているように科学の形式知を整理しておくことは重要である。

 

形式知を整理せずに実務を進め品質問題を発生しがちなのが耐久試験のやり方である。11月7日に下記タイトルで講演を行いますので、ご興味のある方は問い合わせていただきたい。

 

「ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策」

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop