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2017.11/02 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(8)

1000Ωcm程度の導電性があれば、パーコレーション転移が起きたときに、どのくらいの添加量でどの程度の帯電防止性能を実現できるのかシミュレーションしたところ、15-18vol%の添加で10の10乗Ωcmという導電性が得られる、という結果が出た。

 

この値をゴールにしてバインダーとプロセシングの工夫をしたところ、酸化スズの量が18vol%でPETフィルムにタバコの灰付着テストに合格する、十分な帯電防止性能を持った薄膜を開発できた。ゴールの確認はインピーダンス法で行っている。

 

この開発を進めていた時に他のグループで帯電防止層を実現するためにライバル特許に抵触しないフィラーを探索していたグループもいたが、パーコレーション転移の制御ができず開発に失敗している。

 

写真業界は特許競争の激しい分野であり、高分子バインダーの開発をしなくてもよい(頭を使わなくてもよい、という意味かもしれない)利用しやすいフィラーについてすべてライバルに抑えられていた。

 

特公昭35-6616のおかげで、酸化スズゾルだけが唯一特許フリーの透明導電性フィラーとして残っていた。ゆえに技術開発の方向はバインダーの開発しか無かったのだ。

 

しかし、科学の視点では透明な無機物質は酸化スズ以外にも存在しフィラーを探索すれば特許抜けが出来そうに思われる。ここで使いやすいフィラーが容易に見つかると期待しフィラーの探索をするのか、高分子バインダーを開発するのかは技術者が責任を持って判断しなければならない。

 

現代は、インターネットでフィラーを検索すればいっぱい出てくる。しかし、目的に合う特性を持ったバインダー情報はフィラーほど得られない。このような状況で複合材料のいろは、とは高分子バインダーの設計法のイロハとなる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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