2017.11/04 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(10)
昨日の悲しい結果は、2004年に無機高分子研究会で発表されている。熱伝導性の異なるフィラーを同一体積分率で樹脂に添加しても複合体の熱伝導性が変化しない、という現象は、フィラーの熱伝導性よりも高分子バインダーの影響が大きいことを示している。
そこで高分子側の熱伝導性を改良しようという新しいコンセプトのフィラーを用いた高分子の高機能化技術が最近開発されている。その技術によると、フィラーの熱伝導性の違いが複合体に少し現れるようになる。ただしわずかである。
高価なダイヤモンドを用いても安価なカーボンを用いた熱伝導性と変わらない高熱伝導樹脂複合体という結果はあまりにも惨めな結果だ。
ただし、樹脂への充填量を50vol%以上添加すると少しずつフィラーの熱伝導率の差が複合体に現れるようになる。これは充填量が高くなりクラスター間の接触が密になって樹脂の低い熱伝導率の影響が小さくなってくるからだ。
それでは、2004年の無機高分子研究会で発表した研究者は、なぜこのあたりまで充填率を高めた研究を行わなかったのか。それはここまで充填率を高めると複合体の実用性を損なうからだった。
実は特許などを見ていると60vol%を超える充填率で熱伝導樹脂を製造する発明が公開されている。この技術の難しいところは、得られた複合体ペレットをどのように成形するのかという点である。
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