2013.03/07 有機物で電池の正極を創る(2)
エネルギー問題への関心やボーイング787の事故もあり、Liイオン二次電池に対する関心が高いのでしょうか。昨日の報告に対して反響が結構ありましてびっくりしています。本日続編でもう少し詳細情報を書きますが、一部有料情報につきましてはお問い合わせください。
まず、講師の先生は、京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻教授吉田潤一先生です。開催場所は、高分子学会高分子同友会会議室。ここで月に何回か勉強会が開催されています。詳しくは高分子学会へお問い合わせください。
講演のタイトルは、「高性能リチウムイオン電池のためのピレンテトラオン構造をもつ有機ポリマー正極材料の開発」で、講演内容のポイントは
(1)Liイオン二次電池の正極物質に最適な分子構造を理論計算により設計。
(2)設計した分子を導入したポリマーを合成し、Liイオン移動型の二次電池を開発。
(3)高蓄電エネルギー密度、高い充放電サイクル特性、高速充放電を実現。
1980年代にブリヂストンでポリアニリン正極を用いたLiイオン二次電池が実用化され、日本化学会化学技術賞を受賞いたしました。この業績は、正真正銘の世界初の高分子Liイオン二次電池の実用化であるとともに白河先生のノーベル賞の具現化でもあります。
しかし、吉田先生のご研究は、このポリアニリン正極よりも遙かに性能が良く、新たな可能性を示す成果をあげられており、すばらしいご研究と思いましたので昨日取り上げました。また、この成果の公開を許可されたP社にも敬意を表したいと思っています。
企業研究の場合にそれが新しいコンセプトであればあるほどなかなか外部発表までさせて頂けません。例えば、フローリーハギンズ理論から絶対に相溶しないと思われる有機高分子と無機高分子を新しいコンセプトで均一に相溶することに成功したポリマー前駆体を用いた高純度SiCの技術についてなかなか発表できませんでした。ポリアニリンのLiイオン二次電池の発明よりも早く実現していたのですが、日本化学会化学技術賞の受賞はポリアニリン二次電池の受賞から20年以上過ぎていました。
そのような経験もあり、昨日の研究報告を許可されたP社の技術に対する自信に敬意を表したいと思っています。
カテゴリー : 電気/電子材料
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