2013.03/11 半導体領域の材料設計
1万Ωcmから10が10個前後並んだ領域までの体積固有抵抗を持つ材料を半導体という。下限を1000とか10万Ωcmとしている教科書もある。上限も12個程度10が並んだ領域まで半導体領域とする教科書もある。半導体とは、適当に電気を流してくれる材料なので、その物性も適当に扱われているように見える。
しかし、実用化するときには、厳密なスペックの中に物性をおさめなければならない。これが難しい。例えば、導電体であるカーボンや金属粉を絶縁体である高分子に分散して抵抗を調整しようとすると偏差が4桁以上ばらつく場合も出てくる。
パーコレーション転移が起きるためである。たまたま実験室で安定にできても安心できない。確実にパーコレーション転移を制御できる材料設計を行わない限り、自然現象に任せていてはロバストの高い商品はできない。
絶縁体に導体を分散して半導体領域の材料を設計する場合以外に、金属酸化物半導体もその抵抗は大きくばらつく。難黒鉛化カーボンもロットにより2桁程度抵抗偏差が生じる。半導体領域の材料は、うまく設計しない限り2桁以上は抵抗がばらつく、という常識を持っていた方が良い。たまたま測定値が安定な材料が得られたときに、その原因や理由が明らかになっていなければ安心してはいけない。
コニカへ転職して間もないときに帯電防止材料の新規アイデアを相談してきた人がおり、アイデアを話したところ、その後なしのつぶて。たまたま相談者と廊下で出会ったときに、進捗を聞いたところ、「うまく進捗しているからほっといてくれ」という意味に近いことを言われたので、ばらつきの制御だけは注意するようにアドバイスしたが、その1年後帯電防止層の品質問題が起きて、仕事が自分のところへ回ってきた。量産が始まったところで導電性が2桁程度ばらつき、問題だ、とのこと。帯電防止層の処方を見たら、ただ材料を2種類混ぜているだけで材料設計されていない処方であった。技術を甘くみてはいけない。
実は材料物性において、導電性はその偏差の大小が材料および設計方法により大きく異なる。力学物性よりも測定値の偏差は小さいと思っているととんでもない失敗をする。導体である銅でも純度が管理されなければ1桁程度ばらつく。半導体領域になるとそのばらつきが目立つようになるだけと考えると気楽だが、商品の中には1桁以内に偏差を抑えることが要求される場合もあるので高度な技術が必要になってくる。
この材料設計では、複合材料で半導体を製造する場合と単一組成で半導体を製造する場合とでは戦略が異なる。ただし、プロセスの負荷が小さくなるように設計する方針で考える、あるいは、プロセスの負荷が大きくなる場合には既存のプロセスに改良を加え生産の安定化設計を行うなど、共通する部分もある。大切なことは、半導体領域の材料設計が、絶縁体や導電体よりも安定した物性を造り込むことが難しい点を認識することである。
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