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2018.03/23 高分子の結晶化速度

高分子の結晶化速度論についてアブラミの式で解析されるが、いつも不思議に思っている。PPSを扱って10年以上になるが、この材料の結晶化速度は、単純にアブラミの式で解析できないのでは、と思ってしまう。

 

そもそも高分子の結晶化速度論は、無機材料の結晶化速度論からの借り物ではないか。無機の結晶について、その速度論の論文を読むとデータとの対応が美しくわかりやすい。SiCの速度論的解析を行ったときにもたいへんきれいなデータが得られ、解析結果もアブラミ式でうまく整理できた。

 

しかし、高分子の結晶化速度論の論文を読むと、速度式からのずれがすっきりと説明されない、という欲求不満になる。無機の結晶化に比較してその機構が複雑なためであるが、ここで一つ大きな問題が出てくる。

 

速度論の解析では、その結晶化の機構を暗黙のうちに仮定して行う。換言すれば、結晶化機構が不明な場合には、速度論の解析が難しくなる。

 

シリカ還元法によるβSiCの速度論的解析を当方が行うまで誰も成功しなかったのは、シリカとカーボンの均一な前駆体が無かったからで、不均一な場合にはSiOガスの発生など反応機構が複雑になり速度論の展開が難しくなる。

 

無機材料の場合、その単結晶はひずみを内蔵しているが、一応シャープなX線回折信号が得られる。しかし高分子結晶ではこのようなシャープな結果が得られない場合が多い。

 

13年ほど前にコンパウンディングしたPPS/6ナイロンの透明ストランドがいつの間にか真っ白になっていた。おそらくPPSが結晶化したためにスピノーダル分解が進行し6ナイロンが析出したためと思われるが、その結晶化速度は極めて遅い。

 

Tg以下でも結晶化するのか、と驚かれる方もいるかもしれないが、障子のノリに使用されるPVAが一年かけて球晶となる姿を観察していただくと、この事実を納得できると思う。朝目が覚めて頭がすっきりしていないときに書く話ではない、と思いながら書いている。

カテゴリー : 一般 高分子

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