2018.03/25 フィギュアスケート世界選手権
昨晩ミラノで開催されていた「フィギュアスケート・世界選手権」男子フリーのライブ放送が夜8時から行われた。平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨は昨年の世界選手権に続いて2位だった。
オリンピック終了後、靴を新調した影響か、はたまた右足故障の影響からかジャンプで転倒が相次ぎフリーは179・51点、SPとのトータルは273・77点で、300点越えはならなかった。
ただ、終盤にはジャンプを成功させており「失敗が多く終わったが、最後の方、何とか耐えられたのは練習の成果と考えたい」とインタビューに答えていた。銀とはいえ満足な演技ができなかったので悔しかったのか、その目には涙があふれていた。
出場枠確保の戦いでもあり、期待された田中刑事は13位だったにもかかわらず、宇野が2位、初出場の友野一希ががんばって自己ベストの記録で5位に入り、来年日本で開催される世界選手権の3枠を確保した。
ちなみに、オリンピックでその実力を根性で見せたネイサン・チェンは321・40点でダントツ1位だった。
1位と2位が大差となったのは、2位以下6位までの選手でパーフェクトに演技ができたのは友野一人で、彼はFSだけ見れば3位と健闘していた。
期待された4回転ジャンパーたちは、皆複数の転倒が相次ぎ、SP上位の選手が6位以下に沈み、転倒してもSP4位の宇野が銀メダルをとれた原因となっている。
同じ4回転ジャンパーでも安定性(ロバスト)が実力差として現れた。上位陣で4回転ジャンプを転倒せず飛べたのが、友野とネイサン・チェンだけだったのだが、友野はその実力の余裕というよりも初出場の挑戦者という真摯な姿勢が実を結んだ。
理論的には人間の能力で5回転ジャンプまでできるそうだが、現在の男子フィギュアスケートがその能力の限界ギリギリのところで戦っている状況を今回の世界選手権は見せてくれた。
荒れた大会は、女子も同じで、SP2位でスタートした平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワはフリーで3度の転倒が響き128・21点と、合計207・2点の5位に終わった。
オリンピックで批判が噴出し、ルールの見直しが提案されるまでになった、後半に7本のジャンプを固め打ちする演技構成が、1.1倍の得点増を狙うという彼女の”せこい特徴”である。
その最初の高難度のコンビネーションのジャンプのトリプルルッツでまず転倒すると、ダブルアクセルからのトリプルトゥループも転倒。トリプルループにも果敢に挑戦したがこれも転倒するなど、まさかの3度の転倒となった。
解説によれば、後半にジャンプを詰め込んだために、ミスの立て直しが難しく、曲に合わせようとすると複数のミスが出るのは避けられないという。
これは策士、策に溺れる状態だが、引退した浅田真央がトリプルアクセルに拘ったチャレンジ精神と異なり、フィギュアに求められる芸術性を無視した得点増という狙いが見えすぎであり、同じ極限への挑戦だとしてもザギトワに対して世間の見方は厳しい。
ちなみにフィギュアスケート女子の成績についてSP首位のコストナーはFSで精彩を欠き、FS3位だったオズモンドが優勝し、樋口が2位、宮原が3位だった。
女子フィギュアスケートでは、人生において運が半分、という厳しさを毎年見ることができる。オズモンドの信じられないという笑顔が、その人柄も感じさせて、あのゴールドよりも一瞬美しく見えた。
かつて、キムヨナと浅田真央の熾烈な戦いでは、限界よりもロバストを追求したキムヨナが、スポーツゆえにチャレンジを重視した浅田真央に勝利回数で上回っている。しかし勝利しても、それが当然というキムヨナの姿勢(注)を思い出すと、勝利した時の浅田真央や今回のオズモンドの笑顔には何か救われるものがある。
(注)浅田真央が一位になっても、間違えてキムヨナが一位の表彰台に乗ろうとしたシーンも過去にあった。
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