2013.03/31 三菱製ハイブリッド車の蓄電池問題
WEB上のニュースを調べていたら、三菱製ハイブリッド車のLi二次電池が焼け焦げた原因は生産ラインで金属片などの異物が入ったため、と報じられていた。新聞ではそこまで明らかにされていないが、三菱製ハイブリッド車の蓄電池は三菱自動車とGSユアサの共同出資で設立された会社で製造されている、という情報は公開されている。簡単に異物が混入するような蓄電池の製造ラインをGSユアサの技術者が設計するとは思えないが、もし異物混入が原因とするとボーイング社の蓄電池問題も再燃しかねない。ゆえに金属片混入のニュースはGSユアサ側了解の情報ではないだろう。
Li二次電池の構造は電極間にセパレーターが入っており電極間のショートが起きないようになっている。1980年代にはLi金属を負極に用いる研究が盛んに行われたが、Li金属を用いるとデンドライトの析出でこのセパレーターが破れLi二次電池が爆発した。ソニーが両電極をLiイオンのインタカレーションで充放電を行うLi二次電池を発売し、それがLiイオン二次電池元年とされている。
また、ソニーもLi二次電池の危険なイメージを払拭するためにわざわざLi「イオン」二次電池という名前で商品化している。すなわちLiは金属で存在せずイオンの形式で存在しているので安全である、と言いたかった。電解質に可燃性有機物を用いている以上危険であるにもかかわらず、Liがイオンで存在しているから安全、と言うには多少無理があるが。
昔ながらのマンガン電池やニカド電池では液漏れの事故で悩まされた。ただこれらの電池は電解質が水なので液漏れによる被害は爆発に至らず装置の電池室を汚染するぐらいである。Li二次電池では電解質が有機物なので液漏れは火災に直結する。ゆえに最近の電池は難燃剤を添加するか、あるいは不燃性化合物を用いている。しかし、それでも有機物なので高温で酸素に触れれば炭化する。
興味深いのはボーイング社でも三菱自動車の事故でも爆発炎上まで至っていないことである。これはGSユアサの技術力を示している。万が一のことがあっても爆発しない蓄電池ができている。液体の電解質を用いる以上電池で液漏れを100%防げないのでこれはすばらしいことなのだ。蓄電池分野のテーマで固体電解質の研究が40年以上続けられているのはそのためである。NaS電池は固体電解質を用いることに成功したが昨年爆発事故を起こしている。電解質は固体になったが、金属Naを用いた危険性を忘れている。
蓄電デバイスというものはエネルギーを貯めるデバイスなのでいくら設計が良くても使い方が悪ければ、基本的に爆発する危険性がある。3V程度で使用している限りにおいては大事に至らないが、複数重ねて高電圧で用いるときには、完成されたパワーマネジメントシステムが必要である。しかし特許を見ている限り化学屋を満足させるシステムはまだ無い。今世の中は蓄電池のエネルギー密度を上げることに必死になっているが、力を入れなくてはいけないのは蓄電デバイスのパワーマネジメントシステムの開発である。
カテゴリー : 電気/電子材料
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