2018.08/04 微粒子へ吸着した高分子
溶媒に溶質が分散している状態をコロイドという。コロイドで流動性をもっているとゾルと呼ばれ、流動性が無くなればゲルと呼ばれている。ただし、これらの用語は、科学的に厳密に定義された言葉ではないことに注意する必要がある。
ところで溶媒が水であるシリカゾルは用途が多い。このシリカゾルのシリカ粒子表面をラテックスで覆った材料がコアシェルラテックスと呼ばれる20世紀末の新素材であった。
水に分散した状態のシリカ表面で重合反応を行い、うまくシリカをラテックスで覆いつくす技術は、初めて見たときにはものすごい技術だと思った。
しかし、このシリカ粒子に一本の高分子を巻き付けてミセルとして用い、ラテックスを重合する技術を開発した時に、こちらの方がもっと素晴らしい、と自画自賛した。
シリカ粒子に一本の高分子をうまく巻き付けるのは大変である。シリカ粒子をピンセットでつまめるわけでもなく、また高分子をひものように扱えるわけでもないのである。
ただ条件さえあえばこの不思議な現象はいとも簡単に起きる。コアシェルラテックスは科学的に考察を進めれば誰でも開発できるが、シリカ粒子に一本の高分子を巻き付ける技術は、それを発見できなければ意図的に狙ってできるものでもない、とある日気が付いた。
コアシェルラテックスを合成するために必要な、シリカ粒子に高分子を吸着させる技術は、1995年頃に日本化学会で発表されている。また、表面界面のシンポジウムでも取り上げられ、そのレオロジー的挙動が議論されている。この講演を聞き、きれいに巻き付ける技術が簡単ではないことに気が付いた。
粒子に高分子がただ吸着した状態と、粒子1個にきれいに高分子が巻き付いた状態では、レオロジー挙動が異なる。また、前者はゲル化する現象も起きたりするが、後者は安定なコロイド溶液となっている。
カテゴリー : 高分子
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