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2013.04/21 多変量解析(1)

大学院に進学した頃8bitのマイクロコンピューターが話題になり、シャープからMZ80Kという組み立てキットが登場した。社会人になって車を買う前にこのMZ80Kを手に入れたが、BASICとアセンブラーがついていただけ。単純な計算はアセンブラーでコードを書けばよく走る。アセンブラーではプログラミングが面倒な作業になるので長いコードを書かないからバグも見つけやすい。

 

しかし、BASICはすぐにスパゲッティーよりも長いプログラムになる。走りも良くないが、バグるとリセットする以外に対応方法が無い。しかし、多変量解析などのプログラムではアセンブラーでコーディングするには大変で、BASICは重宝した。ただメモリー空間の狭さには閉口した。F-DOSが発売されたので、本体よりも高いフロッピーディスクドライブを購入した。今ではゲームで有名なハドソンからDISK-BASICが発売されたので飛びついた。10変数の実験データまでならFDOSを使い、多変量解析が自由にできるようになった。

 

フロッピーをアクセスしながらプログラムは走るのでちょっとした計算でも30分以上かかる。プリンターが無かったので計算結果は、表示されたデータを紙に手書きで写す。グラフも手書きである。画面に映し出された概略の分布を参考に、軸のスケールを大きくとり大雑把なグラフを手書きで書く。それでも一次相関だけを見ているより開発のスピードは上がり、アイデアも出る。主成分分析では予期せぬ分類を考察することになり、単相関では出てこなかったアイデアが出てくる。50万円近く私費を投入し、会社の仕事を独身寮に持ち帰り夜遅くまで楽しんでいた。今で言う”オタクの世界”だったのだろう。

 

多変量解析については、新入社員の開発実習でIBM3033という大型コンピューターのパッケージプログラムを使ったときに興味を持った。数千万円のコンピューターでしかできない計算を20万円のコンピューターでできるのか、と配属先の上司に言われ会社でMZ80Kを購入することをあきらめた。そこで自分で購入しチャレンジした。初めてプログラムが動いたときにはものすごく興奮したことを覚えている。

 

当時、機器分析技術が進歩していて、ゴムの分析データは1週間程度で分析グループの研究員が出してくれた。力学物性の試験結果と分析データを組み合わせて、単相関でグラフをいっぱい作成し、考察を進めるのが当時の仕事の進め方だが、これを改善したかった。せっかく分析グループの研究員が迅速に出してくれたデータである。仕事のスピードだけでなく、データを隅から隅まで利用したかった。大型コンピュータは専門家以外は自由に使えない環境で、さらにMZ80Kは上司の理解が得られなかった状況だったので、多変量解析を仕事に使うならば自分でコンピューターを購入する以外に道が無かった。

 

しかし、自分で多変量解析のプログラムを作る機会は、勉強不足の分野を補強する機会でもあった。学生時代あまり読んでいなかった線形代数の教科書はとたんに赤線だらけになった。当時の数ヶ月分の給料の出費は痛かったが勉強をする動機づけにはなった。お金も無くなり遊ぶこともできず、休日は独身寮でMZ80Kを動かし過ごす。仕事と私生活の区別が無い、サラリーマンとして落第生だったが、ストレスは無かった。毎週新しい発見がある仕事が楽しかったのである。

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