2018.09/13 高分子のばらつき
高分子材料の物性はばらつくのは常識である。高分子のばらつきは、非晶質相に存在する部分自由体積を制御できないことから、0にできない、と容易に想像できる。
部分自由体積がばらつけば、密度がばらつく。密度がばらつけば、それと相関する弾性率や誘電率もばらつくことになる。
弾性率がばらつけば、引張強度や曲強度は必ずばらつくことになり、衝撃強度に至っては大きなばらつきとなる。
誘電率がばらついても同様に屈折率をはじめとした物性が皆ばらつくことになる。このばらつきを小さくするために、タグチメソッドはそれなりに有効である。
しかしタグチメソッドで最適化しても裏切られることがあるのは覚悟しておくべきである。これはタグチメソッドが悪いのではない。
高分子材料の高次構造はざっくりと書けば、結晶になりやすい部分あるいはすでに結晶化した部分と非晶質部分からなり、非晶質部分には部分自由体積というばらつきの巣窟がある。
またラメラの集合体である高分子の結晶には少なからず非晶質部分が存在する。すなわち、いくらタグチメソッドで最適化してもこれら構造に基づくばらつきの制御など安直にできないのである。
だから運悪くスペックから外れた品質データが得られたりすると捏造したくなる。捏造を防止する一番良い手段は、スペックに入るまで成形と測定を繰り返す、と仕様書に書いておくことである。
こんなことを書くと笑われるかもしれないが、高分子材料の品質とはこのようなものだと考えていると技術開発の正しい方向と品質管理のあるべき姿というものが見えてくる。すなわち高分子材料の仕様書を作成するとは、その行為自体がノウハウなのだ。
pagetop