2018.10/31 高分子の熱分析(2)
それでは、DSCで何がわかるのか。DSCでは、サンプルがその温度で熱量の変化を伴う状態にあるかどうかを教えてくれる。すなわち、溶融時には吸熱変化をするので、溶融し始める温度から吸熱状態を示す信号を出してくれる。
結晶化では発熱を示す信号を出してくれるが、ここで注意しなければいけないのが、結晶化は相転移であり、無機ガラスでは、Tgよりも低い温度領域にTcが現れるが、高分子ではTgより高い温度領域でTcが観察される点である。
相転移ではないTgは物質の比熱が変化するだけの変化でベースラインの移動として観察されるが、Tcは明確な発熱ピークとして観察さる。簡便には10℃/minの昇温速度で計測し、昇温の測定だけでもペレットや成形体に存在する熱的変化が関わる品質異常を調べることが可能だ。
一種類の高分子についてDSCを測定すると、Tg、Tc、Tmが観察される。高分子の種類によってはTcが現れない場合がある。しかしTgだけでもプロセスの履歴について同じであったか異なっていたのかという情報を知ることができる。
Tg部分のエンタルピーは、プロセスにおける熱履歴が異なると変化するので、自分の扱っている材料についておおよその値を知っていると、工程異常を発見できたりする。Tcが観察されるならばこの発熱量はプロセスの履歴や不純物の影響などを受けたりするので併用すると判断を出しやすい。
昇温測定と降温測定を繰り返し行うとさらに多くの情報が得られる。また、結晶成長の反応速度論的研究をDSCで行うことも可能だ。TGAとTMAを併用して解析することもできるし、X線小角散乱と組み合わせて解析することもある。DSCはTgやTc、Tmを見るだけの装置ではなく使いこなすことによって情報を引き出す装置である。
カテゴリー : 高分子
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