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2018.11/02 高分子の熱分析(4)

1970年代の高分子材料の研究テーマとして熱重量分析(TGA)は、重要テーマの一つだった。しかし、最近TGAはあまり使われない。熱分析と言えばDSCがよく使われる。

 

しかし、空気中あるいは窒素中のそれぞれの雰囲気で昇温過程における熱分解の様子を調べると様々な情報が得られるが、科学的な視点からでは、それらの情報だけで結論を下すことが出来なくて、その他の情報との併用で議論することになる。しかもその時に刺身のツマほどの扱いよりもひどく、時にはパセリのような扱いを受けることもある。

 

このような背景があり、TGAがあまり使われなくなってきたのかもしれない。昔はフリーマン・キャロル法やドイル・小沢法を適用し、どちらの解析がよいかと議論されたときもあったが、今はあまりたくさんの情報が得られないので、と決めつけられ使われなくなってきた。

 

しかし、加硫ゴムなどの分析ではTGAをまず手始めに使いたくなるが、TGAを普段使い慣れていない人にはこの気持ちは分からないだろう。ましてや、高分子に精通した研究者は、WETの分析にすぐ着手する。

 

たしかに、未加硫のゴムや樹脂では、溶媒に溶かし、GPCやガスクロをはじめ様々な分析手段に持ち込むことが可能だが、加硫ゴムや一部ゲル化した樹脂などの分析では、それができない。そこでTGAを手始めに行いたい、となるのだが、TGAはお手軽な分析方法である。

 

煮ても焼いても食えないような加硫ゴムや高分子ゲルでも加熱分解による重量減少カーブからおおよその構造が見えてくる。当然ではあるが、測定条件の工夫をしての話である。この時どのような工夫をするのかと言われると分析対象によるので一口に説明できない。

 

しかし、熱分析法に共通している、昇温速度を変えて測定すると反応速度論的解析が行えるという点に着目すると、恒温測定も行いたくなる。すなわち、まず速度論的解析方法に着目した工夫が多くの場合に有効である。

 

加熱してもある温度以下では分解しない成分の量を見出したい場合でも、この着眼点を使う。昇温プログラムを作成し、昇温と恒温の両者を組み合わせての分析法が使える。TGAからの情報で問題のヒントが見えてきたりすることもある。

 

難燃剤の効果について、もし交互効果の存在を調べたいなら、2種類の難燃剤を混ぜた状態で熱分解の挙動を調べ、それが単成分の場合と異なるかどうかと分析を進めればよい。ただしこの場合に、難燃剤だけではその交互効果が現れないこともあるので注意が必要だ。高分子に分散した状態で初めて交互作用が観察される場合もある。

 

 

カテゴリー : 高分子

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