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2018.11/19 科学で説明できない世界

この科学の時代でも世の中すべての現象を科学的に説明できるわけではない。例えばポリエチルシリケートとフェノール樹脂から作られたSiCの前駆体炭化物を当時の無機材質研究所で初めて1600℃の温度で加熱処理実験を行っていたときに温度コントローラーが暴走した実験がある。

 

この実験では、ただ暴走しただけではない。その時慌てて無機材研の先生を電話で実験室まで呼び、その先生がスイッチを改めて入れなおしたところ、その暴走状態が解除された。

 

驚いたのは一連の偶然の行動が生み出した温度パターンがこの前駆体の熱処理に最適の温度パターンだったことだ。この偶然は、今でも不思議な体験として忘れられない。

 

当方は、電気炉の前でただひたすら神様にお願いをしていた。親は大谷派の仏教徒だったが、その時無意味に十字を切っていた。しかし、キリスト教徒であったわけでもない。神に祈るとはそうすることだとキリスト教徒の友人が教えてくれたからだ。

 

しかし頭の中にはキリストなど現れず、出雲大社が描かれていたのだから、無茶苦茶なお祈りである。実験がうまくゆくように祈りながら一方で良い配偶者に恵まれることを考えていても神がかり的なことは起きる。

 

ここで大切なことは、STAP細胞と異なり、この時偶然得られた前駆体炭素の熱処理パターンで温度コントローラーのプログラムを組み動作させると実験結果を再現できたことである。

 

ただし説明できない不思議な出来事である温度コントローラーの暴走は、この時の一回限りで、その後起きていない。

 

一生涯の運をこの時使い果たしたような偶然がこの時に重なり、たった4日間の実験で製造された数100mgの高純度SiCに対してゴム会社で先行投資として24000万円が決定された。

 

さらに、その時から始まった開発テーマが今日まで30年以上ゴム会社で事業として継続されていることは世間から見れば最も不思議なことかもしれない。

 

さらに、住友金属工業とJVを運営していた時にFDを壊される妨害を受け、写真会社に転職した。退職直前に担当した中間転写ベルトの仕事で、ゴム会社の新入社員時代に指導社員から二軸混練機で実用化できたら凄い技術だと言われていたある技術を思い出した。

 

すなわち、中間転写ベルトの製造工程を経験知と暗黙知で眺めながらカオス混合装置をひらめいた。そして、そのプラントを建設できたことは、運命というものの「不思議さ」だと思っている。

カテゴリー : 一般

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