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2018.12/07 オーディオ

40年以上前空前のオーディオブームが起きている。トリオ、パイオニア、オンキョー、ビクターなどオーディオ専業メーカー以外に家電メーカーのすべてがローディーやオットー、オーレックス、ダイヤトーン、パナソニックなどの独自ブランドを立ち上げていた時代である。

 

その後ブラウン管TVの高画質化大画面化ブームでAVの時代になり、デジタル化の波の中でオーディオメーカーが淘汰されていった。テープデッキで有名だったアカイやアンプで有名だったサンスイのような倒産したメーカーもあればパイオニアとオンキョーのように経営統合したメーカーもある。

 

また、日本で誕生しながら海外だけで展開しているローテルのようなメーカーもある。アイワはソニーの傘下に入った。カートリッジメーカーのオーディオテクニカは細々と事業を行っている。残念ながら当方の記憶にあるのは大衆オーディオメーカーだけで高級オーディオメーカーの動向は知らない。

 

団塊の世代を中心にまたブームが起きるのか、と言われて数年間その兆候があるが、面白いのは海外のスピーカー専業メーカーの躍進と国内自作サポートメーカーの勃興である。スピーカーパーツだけの販売もインターネットでは行われている。

 

しかし、奇妙なのはオーディオ雑誌で、旧態依然とした編集で生きている化石のように書店に並んでいる。どうもAVとの統合とは別の流れとしてオーディオという趣味が細々と昔のまま続いているようだ。

 

オーディオ業界を横目で見ながらジャズやブルース、ウェスタンフォークが好きで長年聞いてきた。デジタルの時代になりテープやレコードが邪魔で捨てようと思ったがレコードのジャケットには未練があったので捨てきれず、テープだけ音をデジタルで保存しメディアをすべて廃棄した。

 

デジタル化はオーディオの世界にイノベーションをもたらしたが、不思議なことにスピーカーの技術は昔のままである。平面スピーカーも登場したりしたが主流にはなっていない。

 

KRIの講演会に招待されたときに、パナソニックの執行役員の講演を聴いた。パナソニックでは新しい再生技術を開発しているとのこと。音場の再生に注力した大学発のアメリカのベンチャー企業ボーズがそれほどオーディオマニアに支持されなかったがパナソニックの試みはイノベーションを起こせるのか?

 

アカデミアの成果で個性的なスピーカー開発を行っているボーズがそれほど成功していないオーディオスピーカーの発展史を見ると、オーディオの世界は未だに科学的と言えない技術が重視されている分野のように感じる。

 

その結果、オーディオ雑誌に載っている評論家の機器評価を見ると、値段の高い機器が高評価を得る傾向にある。また、B&Wのスピーカーに至っては値段が高くなるほど聴感上の違いを利用してよいスピーカーに思えるように商品設計している(注)。

 

要するに良い音を聴くためには高級オーディオを買わなければいけない、という誤解で現在のオーディオマーケットは形成されている。スピーカー自作メーカーの勃興はそのような事情を背景にしているが、けしからんことにパナソニックはマーケットの状況から富裕層のデバイス開発を目指しているという。

 

オーディオ分野は、お金ではなく感性の世界のように思うので、高級オーディオを目指すのではなく誰でも気軽に良い音楽を楽しめるようにすることがあるべきイノベーションの姿である。戦略として高級オーディオで成果を出してから、という考え方を理解できないわけではないが、本当に技術があるならばお金ではなく戦略として感性を切り口に誰でも良い音を楽しめるオーディオを目指して技術開発をすべきである。ちなみにパナソニックのオーディオ分野の執行役員はピアニストでCDを数枚発表している。

 

(注)自作サポートメーカーの音工房Zの視聴会では、B&Wの高級スピーカーと自作品との比較視聴を行っている。そこでびっくりしたのは5000円の雑誌の付録のスピーカーが100万円前後のスピーカーと変わらない音楽を聞かせてくれた。低域にやや物足りなさを感じるがサブウーファーを併用すれば解決する。オーディオは価格でその価値が決まらない世界である。自作すれば20万円前後となる市販パーツを使った一本100万円を超える価格のスピーカーもあるので購入時には注意をしたい。視聴をすれば弊社のコンサルティング料がいかに良心的価格か、と感じる商品である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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