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2018.12/21 指導社員の重要性

新入社員時代担当した樹脂補強ゴムの指導社員は、部下の立場から見て理想的な上司だった。また、いまこそコーチングが部下の指導スキルとして注目されているが、彼の指導スタイルはティーチングとコーチングをほどよくミックスされたスタイルであり、専門技術を要求される部門では、技術の伝承も要求されるという意味で理想的なリーダーだった。

 

写真会社に転職してびっくりしたのは、現場で「チーチーパッパはやめろ」と言われた役員と出会ったことだ。確かに転職した会社では十分な技術伝承が行われているとはいいがたい事態と多数遭遇している。

 

例えば、昭和35年に出願された世界初の重要な技術が全く伝承されず、周辺の評価技術も含め0に近い状態になっていた。不思議に思い、その歴史を調べたらいくつかメーカーとして問題点が見つかった。言い過ぎかもしれないが、技術伝承のDNAを排除するような経営が行われていた。

 

ゴム会社は、技術伝承に全社として取り組んでいる会社であるが、技術に無理解な中間管理職もいるのでそれが癌のように突然増殖するような状況が生まれたりする。しかし、新入社員研修で経験する現場実習のおかげと思うが、異業種交流の場で出会うこの会社の技術者は技術伝承に理解を示す。

 

写真会社でよく耳にした意見に「勉強は自分でする」という自己実現の考え方がある。それに対して、ゴム会社は知識の獲得も含め、社員の自己実現努力に対して好意的であり,会社による積極的支援が充実している。また、社員の留学支援体制も創業者の著書にも書かれているように強固である。

 

恐らく、会社の方針と言うよりも社風として社員の自己実現をどのように位置づけて考えてゆくか、という視点が受け継がれているからだろう。ゴム会社は厳しい会社、と言われるが、この意味で実際には社員に優しい風土だと思っている。これは異なる会社風土に接してみないとわからない。

 

樹脂補強ゴムのテーマを実行中に座学が毎日行われていたが、このようなことを許容する風土のおかげで指導社員の指導方法を批判される人はいなかった。

 

指導社員はたまに冗談で「私は指導され社員」と同僚に語っておられたが、おそらくこの言葉は新入社員の指導を行うときの姿勢として要求される、重要なノウハウを意味している。

 

セラミックスの研究室で2年間過ごし、ゴムのことなどさっぱりわからなかった新入社員から能力を引き出し、新規配合を開発できただけでなく、特許草案や報告書を指導開始の3ケ月後には書けるようになっていたのである。

 

そして、その時の経験知から、30年後カオス混合装置を開発し、中間転写ベルトに用いるPPSコンパウンド工場を3ケ月で0から立ち上げる仕事を成功させている。この指導社員の指導力の賜物である。

 

カテゴリー : 一般

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