2019.02/08 研究開発部門の企画(7)
研究開発部門の企画でありがちなのは、基盤技術強化と称して事業とは無関係の研究企画を立案する間違いである。企業の研究開発部門でいつもその企画はどのような事業になるのかを問い続けない限り、そのような企画を知らず知らずのうちに立案する。
電気粘性流体では、加硫促進剤や老化防止剤などすべての添加剤を抜いたゴム開発という企画が提案された。世の中には存在しないので挑戦的な企画、とリーダーは自画自賛していたが、これは技術を無視したゴミ企画である。
少し考えれば理解できるこの無茶苦茶な技術開発提案がゴム会社で企画として通った理由は、界面活性剤では問題解決できないことを科学的に完璧に証明して、ゴムからオイルにより抽出される物質をなくさなければ問題解決できない、という結論を出していたためである。
そこで本当にゴムからの抽出物が無くなれば、電気粘性流体は増粘しないのか、ということになり、それを確認するために、研究のための研究に相当するゴム開発という企画が本部内で承認された。
ゴム会社でありながらだれもこの企画に疑問を持たなかったのは、研究開発部門だったからである。研究開発部門で研究者だけで企画を行うと、このような現実無視、事業を考慮しない企画を平気で行いがちである(注)。
このような企画を社内で依頼された時には、それを無条件で受け取り推進してはいけない。企画の差し戻し手続きを行うべきである。ただし、その時には、その企画に代わる事業を成功させるための企画を提案しなければいけない。
例えば、界面活性剤で問題解決するという提案である。ただし、これは当時否定された技術手段だったので、実際に問題解決できた証拠を添えて提案する必要がある。そこで一晩かけて成功例を開発した実話を数日前にここで紹介した。自慢話ではなく、睡眠時間を忘れた実話である。
(注)問題解決することが一番大切であるが、その方法がわからない時に、できないことの証明が重要と声高に言われる人がいる。そのような上司や同僚に幾度となく悩まされた。できないことの証明とできた証拠を一緒に提出すると、誰もできない証明の報告書など読まない、という事実を体験している。中間転写ベルトの開発では、部下の課長から外部のコンパウンダーに依頼しているコンパウンドでできない証明をしてくれたらすべてのリソースをコンパウンドの内製化に投入することに賛成する、と言われ、説得することをやめて中途採用者1名と退職前で現場で閑にしていた技能者1名とで子会社にコンパウンド工場を半年で建設し、テーマを成功させた。できないことの証明にエネルギーをかけるよりも問題解決することにエネルギーを投入すべきことが重要であることをすぐに理解できない人は多い。
カテゴリー : 一般
pagetop