2019.04/03 負の誘電率(2)
連続体モデルの理論解析からプラス電荷とマイナス電荷のズレ(分極)が単一方向にそろっている状態であれば負の誘電率が出現するといわれているが、この場合に分極ドメイン構造のほうが安定なので負の誘電率発現が抑制されるという。
ところがこの解析結果で分極ドメイン構造が生じなければ、あるいは何らかの理由で分極ドメインが不安定になったなら、負の誘電率が現れることになる。
例えば、導電体や半導体のドメインが生じた場合には電子の拡散速度というものは早いので負の誘電率が現れる可能性がある。
実用化されているPPS製中間転写ベルトの誘電率を測定すると正であったが、実用化過程で得られたベルトの中には負の誘電率を示すものが存在した。
用いている導電性カーボンはすべて同じロットの製品であり、異なるのはマトリックスの配合だけである。すなわちPPSへ添加されたポリマーの種類や混練条件で負の誘電率を示すベルトが得られたことを示している。
誘電率が正のパラメーターであることは電磁気学の教科書に書かれているが、計測でこのような負の誘電率が現れる現象については、現代のホットな話題の一つだ。
負の誘電率が存在すれば、負の屈折率も可能性があり、世間では光学分野の関心が高いようだ。永らく屈折率を正として扱い、光学の体系が作られてきたが、その再構築を迫る現象のためだからだ。
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