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2019.04/24 高分子の誘電率

高分子の誘電率や屈折率は、密度の影響を受ける。すなわち以前も書いたが、制御が難しい自由体積の量にも影響をうける。これがどの程度影響を受けるのかは、密度と誘電率とのグラフを作成して確認する以外にない。

 

面白いのが、有効数字三桁程度ではきれいに再現性の良いグラフとなるが、4桁になると難しくなってくる高分子も存在する。おそらく3桁でも制御するのが難しい高分子もあるかもしれないが、当方の経験では3桁程度は何とか制御できた。

 

これがフィラーが入ってくるとさらに難しくなってくる。また困るのは、コンパウンド段階の評価と成形体の評価がずれてくる場合である。それぞれのばらつき具合が同じであればよいが、その偏差そのものがロットごとにばらつくので管理にノウハウが必要になってくる。

 

中間転写ベルト用コンパウンドを子会社で立ち上げたときに、押出成形でできるベルトの抵抗をペレットの誘電率で管理する技術を開発した。この時は、直流で計測されるベルトの表面比抵抗との対応をペレット段階の電気抵抗で管理できるのか、が大きな問題となったのでインピーダンスを持ち出したのだ。

 

ただ、インピーダンスでは少し電気をかじったことがある人が、交流の抵抗と対応をみてもよいのか、といいだした。そこでペレットの誘電率を管理することにした。

 

誘電率とベルトの抵抗がどのような機構で相関するのか、という質問も出たが、実験データでこのような関係にあるから管理可能と説明している。なんでも科学的に説明しないと納得しない人が多いのは困る。

 

科学がいくら進歩しても、人間が自然界を完璧に管理できるわけではない。当方にとって大切なことは、ペレットの製造ばらつきをどのように検出して管理してゆくのか、という問題である。

 

この時の誘電率は空隙法で計測しているが、有効数字は二けたであった。たった有効数字二桁でベルトの抵抗管理ができた。これはパーコレーション転移の閾値近傍における管理だったので、カーボン量が1%もばらつくだけで、誘電率が3割ほど変化してくれたから管理パラメーターとして使用できた。

 

ただこの管理手法は、ペレットが狙ったとおりの高次構造で生産されていることが大前提になる。もし狙った高次構造と異なったら、おそらくペレットの誘電率とベルトの表面比抵抗とは異なる相関、あるいは無関係になるかもしれない心配があった。

 

そこで粘弾性手法を用いて高次構造の管理を行ったのだが、この粘弾性データが、ベルトの表面比抵抗の生産ばらつきと相関するという予期せぬ結果が得られたのはびっくりした。このことは後日またここで書きたい。今日はここまで。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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