2019.05/12 架橋型PPSで紡糸ができた
PPSにはリニアタイプと架橋タイプがある。後者が最初に開発され、前者は後者の問題解決技術として登場している。架橋タイプのPPSは射出成形は可能だが、フィルムや繊維を製造することができなかった。そこでリニアタイプのPPSが開発されている。
リニアタイプのPPSでは、射出成形もできて押出成形も可能で架橋タイプのPPSに比較して圧倒的なアドバンテージがある。ただし、架橋タイプのPPSにも長所があって、低分子量体を製造することが可能で流動性の制御がリニアタイプPPSよりも容易なのだ。
今リニアタイプのPPSの需要が伸びているらしい。製造コスト面ではリニアタイプも架橋タイプも変わらないらしいが、東ソーは架橋タイプのPPSだけを生産している。
基本特許も切れているのに、なぜリニアタイプのPPSを製造しないのか不思議だが、特許を見てみると独自の事業展開をされている。昨年架橋タイプのPPSを少し分けていただき、信州大学で紡糸の実験を行ってみた。
常識通り、架橋タイプのPPSではすぐに糸切れを起こし、紡糸できない。比較に中国製のリニアタイプPPSで紡糸したところ、うまく繊維化できたので、やはり、架橋タイプPPSでは紡糸できないようだ。
この紡糸できない原因として、架橋タイプのPPSでは分子量が小さいため、という形式知からの結論がある。この形式知にチャレンジするつもりで、新たに開発したPH01という添加剤を架橋タイプPPSにカオス混合で混錬したコンパウンドを製造し、紡糸実験を行ったところ、見事に紡糸できたのだ。
これは、当方の経験知に基づき、この結果を狙ってやった実験だが、信州大学の先生もびっくりされていた。PH01の分子量は紡糸に必要な分子量ではないが、また、PPSも架橋タイプであり分子量は低い。関係する特許出願も終えたので書いてみた。今日は母の日。
カテゴリー : 高分子
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