2019.05/13 高分子の熱変化
高分子材料のプロセシングでは、溶媒に高分子を溶解したりラテックスとして用いたりしない限り、それが流動性を示す状態まで加熱しなければいけない。
しかし、高分子が溶ける温度、融点(Tm)についてその現象は無機材料と大きく異なる。無機材料のTmは、結晶の自由エネルギー(G)変化と融体のGの変化との交点に現れる。融解は1次の相転移である。
ちなみに、エンタルピーをH、エントロピーをSとすると、 G=H-TS δG=δH-TδS となるが、これはエネルギー保存則の自由エネルギーについての定義だが、熱力学第一法則やその周辺の定義式は覚えておいてほしい。
なぜ、と深く考えることは重要だが、法則や定義など形式知から考えると時間の短縮になる。それが大人の「なぜ」である。世の中には、完璧な答えの出ていない形式知も存在するが、そこを凡人が考えていても答えを得るまで生きていられるかどうかわからない。
ゆえに形式知から考える習慣が大切である。若い時には気持ちが悪かったかもしれないが、残りの寿命が短くなってくると、この形式知のありがたみがひしひしと身に染みてわかってくる。G=H-TSそしてその形式微分などは、配偶者の言動と同様にすべて受け入れる、それが幸せの愛の道である。年を重ねるとよくわかる。
ここで高分子の熱運動について結晶状態と融体状態で比較すると、融体状態のSが大きい。このときSは場合の数として捉えると理解しやすい。
結晶状態は規則正しくなっていなければいけないことを理解できればdS(結晶)<dS(融体)を形式知まで遡らなくても感覚としてあるいは暗黙知や経験知を活用して理解できる。
もし、自由エネルギー変化を温度の関数としてグラフを書いたならば、結晶と融体についてその傾きは-dsとなり両者負で、結晶よりも融体の直線の傾きは大きくなる。ゆえに両者のグラフはどこかで交わることになり、その交点がTmとなる。
無機材料では、結晶化の温度(Tc)とTmは一致するが、高分子ではこれが一致しない。そのうえ高分子の種類によりTmとTcには、ずれが生じTc<Tmとなる。
例えばPEでは、最大のTc(Tcmax)は、Tmの0.8から0.9倍であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)では、2Tcmax=Tm+Tgの関係があることが知られている。
カテゴリー : 高分子
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