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2019.05/14 混練温度と経験知

昨日、高分子の融点(Tm)の話を書いた。高分子のTmは、無機材料のそれと異なり、必ずしも結晶の融解温度(Tc)と一致しない。さらにTmとTcが別々に観察される。

 

高分子技術者は、ここで高分子を高分子として感じなければいけない。「感じなければいけない」と書いているのは、未だ高分子の形式知の体系は出来上がっていないので、カンが必要だ、ということを指摘している。

 

カンを否定する人がいるが、技術開発において「カン」は重要である。ヤマカンだろうがドカンだろうが第六感には暗黙知の情報が含まれている。

 

テルマエロマエのように未来へワープしてカンニングできるならば話は別だが、さすがにカンだけでは実際の技術開発は無理で、それに成功するためには形式知を頭に蓄積しておく必要がある。そのうえでカンを働かせよ、ということだ。

 

高分子でTmとTcが一致しない点に気がつくと、Tm以下で混練できるとカンが働く。少なくともTcまで下げても混練できるはずだ、とカンをよく働かせてほしい。

 

ここで実験を行う人とそうでない人でカンが大切な暗黙知の情報提供になるのか、ドカンで終わるのかが分かれる。また、実験を行ったとしても幸不幸もそれが経験知の蓄積につながるかどうかに影響する。

 

不幸な人は実験でトルクオーバーという事態に遭遇しびっくりして、やっぱり無理だとなる。しかし、幸運な人は無事混練することができ、できあがった組成物がTmで混練した生成物よりも良好な結果でにっこりすることになる。そして経験知が一つ増える。

 

GPCを測定しても分子量低下が起きていないので、感動する。粘弾性測定を様々な高分子について行い、この時の経験知がどうしてなのかを間接的に探ってゆくことにより、経験知はさらに汎用知識となってゆく。

 

形式知の体系ができていない知識は現象を直接見ることにより、形式知に近づいてゆく。天才ならば、そこから新たな形式知を創り出すが、凡才ならば高度な経験知として蓄えられる。

 

結果を聞くだけで満足しているのは凡才以下である。耳学問も大切だが、知識をどこかで確認する、あるいは直接現象を眺めてみる、自然の中でそれを確認しようと努力することはさらに大切である。

カテゴリー : 高分子

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