2019.05/15 物理化学の教科書
学生の頃、分子論がすでに形式知として定着し、バーローの書いた物理化学の教科書が標準教科書として選ばれていた。困ったのは、教授によりバーローではなく、ムーアの教科書を勧める先生がいたことだ。
結局、バーローとムーアの物理化学の教科書を上下4冊購入することになるのだが、さらに困ったのは、ご自分の著書を勧めた先生もおられた。ただ、その先生の著書を読んで買うのをやめた。
理由は簡単で、バーローとムーアのいいとこどりをしているような教科書だった。バーローとムーアの教科書については、1年生の夏休みの時にすべて読破し、問題も解いていたので、二年生になりこの先生の教科書を購入することをやめた。
単身赴任した時に、手元に物理化学の教科書が欲しいと思い本屋に行ったところ、マッカーリとサイモンの著による物理化学の教科書があり購入したが、バーローとムーアの3倍以上の価格がついていた。
今時の学生は教科書が高いから大変だと思ったが、昔はカレーライスが150円で食べることができて、バーローの上巻は1800円だったことを思うとマッカーリーとサイモンの著による物理化学は、カレーライス10杯分よりも安い。しかし、今は吉野家の牛丼を基準に考えた方が良いかもしれない。やはり高すぎる。
ところでこのマッカーリーとサイモンの著による物理化学の教科書は高いだけあって、厚みはバーローやムーアの本のおよそ1.5倍である。価格も高く、本の厚みも分厚くなって、今時の学生は大変だ、と思った。これでは夏休みに全部読もうなどという気持ちは起きない。
さらに、教科書の最初は、熱力学ではなく、量子力学から始まっている。とてもじゃないが、夏休みに寝転がって読めるような本じゃない。しかし、読むと面白い本であり、もし昔物理化学が好きだった人は一読をお勧めする。
疑問に思ったのは、なぜ最初に量子力学なのか、という点である。確かに形式知の体系としては正しい。ただ、学ぶ側からすれば、最初に熱力学のほうが、学びやすいのである。今時の教科書は皆そうなのかと思い、5年ほど前に学会でアトキンスの物理化学の教科書(英文)を見つけたので読んでみたが、これは熱力学が最初であった。
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