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2019.05/27 樹脂の混練のエラーの苦い経験

混練条件が変化すれば、添加剤の分散状態や高分子の絡み合いも変化し、成形体の物性にその変化が現れる。しかし、この変化はゴムの場合に比較して樹脂の成形体の場合には大きく現れない。

 

すなわち、樹脂の種類によっては混練条件が変化してもその影響が物性に現れにくい樹脂が存在する。さらに射出成形条件がばらつくので、そのばらつきの中で混練条件のばらつきが消えてしまうこともある。

 

その結果、どのようなコンパウンドでも成形できる成形技術を目指そうという成形の研究者も現れる。例えば射出成型の研究者はこのような人が多い。

 

少なくとも射出成型の研究者からコンパウンドの製造条件がどれだけ影響しているのか研究していますという声を聴いたことが無い。

 

メーカー名を出したいくらい腹が立った経験談を語ると、現場の混練機の温度条件を管理できない、すなわち温度センサーが壊れた状態で混練したコンパウンドを納入してきたメーカーがいる。

 

複写機の外装材で品質問題が起きたのでコンパウンドの熱分析を行い、混練に問題があると仮定し、その生産現場を監査し、温度センサーが壊れた状態で生産している実態を見つけた。

 

しかし、それでも品質検査により正常なコンパウンドを納入しているので温度センサーの影響は外装材の品質問題と無関係と図々しく主張(スの入ったコンパウンドを目の前に並べても問題ないと言っていたのには驚いた)し、最後には当方は混練技術についてわかっていない、とまで言い切ってそのメーカーは逃げ切った。

 

当方は正直なので、現在の形式知ですべてを解明することはできないが、と前置きしたところで、品質部長からタオルを投げられた。

 

すなわち、温度センサーが壊れていようがスクリューの一部が欠けていようが、どのような状態でコンパウンディングされても問題ない、と同僚の品質部長は判断したのだ。

 

この品質部長が悪いわけではなく、大手メーカーのずさんな生産現場で生産されたコンパウンドの問題を完全に証明することができない高分子科学に責任がある。

 

スの入ったコンパウンドでも射出成形を行えば成形体ができ、その成形体が市場に出て数か月後に品質問題を起こしても、コンパウンドの責任と科学で証明することは難しい。

 

しかし、市場で破壊した部位には熱履歴に異常があったと思われる熱分析結果が出ていた。しかし熱分析では完全な証明にならないのである。経験知では混練に問題があるとにらみ、現場で温度センサーの故障を見つけている。それでも経験知は形式知を超えられないのだ。

カテゴリー : 高分子

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