2019.07/16 高分子のプロセシング(19)
高分子材料を混練するためには、それが流動性を示す状態となるまで加熱しなければいけない。まず、高分子が溶ける温度、融点(Tm)について説明する。
Tmは、結晶の自由エネルギー(G)変化を示す直線と融体のGの変化を示す直線との交点に現れる。高分子の融解は1次の相転移である。
ちなみに、エンタルピーをH、エントロピーをSとすると、Gibbsの自由エネルギーの定義から
G=H-TS (2-1)
δG=δH-TδS (2-2)
ここで高分子の熱運動について結晶状態と融体状態で比較すると、融体状態のSが大きくなる説明はいらないだろう。ここでSは、場合の数の関数として捉えると現象とSというパラメーターとの関係について理解しやすい。
高分子の結晶状態はラメラを形成し規則正しく並んでいる状態であり、溶融した高分子が乱れて運動している状態よりもその取りうる場合の数は圧倒的に少ない。
取りうる結晶系が一つであれば1の場合もありうる。するとδS(結晶)<δS(融体)を納得できる。すなわち、両者負の傾きを有し、結晶よりも融体の変化を表す直線の傾きは大きくなる。
さて、無機材料では、結晶化の温度(Tc)とTmは一致するが、高分子ではこれが一致しない。そのうえTm>Tcという関係はあるが、高分子の種類によりTmとTcのズレ方が異なっている。
例えばPEでは、最大のTc(Tcmax)は、Tmの0.8から0.9倍であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)では、2Tcmax=Tm+Tgの関係があることが知られている。
ところで、高分子では融体と結晶で分子の状態が大きく異なるので、溶融するとδSは大きくなることが予想される。
結晶から融体の変曲点では、δG=0となるので、Tm=δH/δSであり、Tmは低下することが理解できる。剛直な棒状分子ならばδSが小さくなるため、Tmが高くなると予想できる。
これは、δSについて考察を進めた結果だが、極性分子や水素結合を生成し分子鎖間に強い相互作用や凝集エネルギーが働く場合には、δHが大きくなるのでTmは高くなると推定される。
カテゴリー : 高分子
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