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2013.06/11 科学と技術(タグチメソッド6難燃化技術の制御因子)

リン系難燃剤のシステムでリン酸エステル系難燃剤の添加量は制御因子か、信号因子か。教科書を見ると制御因子で考えることになる。しかし、難燃化システムの基本機能としてLOIの増加率を考え外側にリンの濃度を取った場合には、信号因子として扱うことになる。基本機能の認識の仕方でこのような考え方も可能なのだ。これもタグチメソッドを難しくしている。

 

タグチメソッドの指導者にこの点を質問した場合に、その指導者が高分子の難燃化技術に詳しければ混乱はしないが、タグチメソッドに詳しいだけで技術というものを知らない指導者だった場合には最悪の事態になる。田口先生と直接議論したから当方もこの点を理解できたのだが、この場合田口先生はどちらでも良い、と言われる。すなわち技術者の責任なのである。

 

そもそもどのような制御因子を選んで実験を行うか、という点も技術者の責任である。この点を指導者の方が勘違いされてああだこうだ、と指図し、担当者の感覚とずれていたときに混乱が起きる。実験者が自由に設定できてSN比を改善できる因子が制御因子なのである。最近の教科書にはこのように書いてある本もあるが、10年以上前は難しい説明がされており理解するのに困難だった。その他調整因子とか因子の名前がいろいろ出てきて混乱した。しかし一番大切なのはSN比を改善できる制御因子を見つけることである。

 

リン系難燃剤を用いた実験で難燃剤の種類を制御因子に選ぶ場合がある。直交表にこの制御因子を入れた場合には、実験は少しややこしく感じるかもしれないが、処方が面倒になるだけで、実験そのものは難しくない。すなわちリンの濃度を揃えて処方を組めば良いのである。ずぼらをするのであれば、あとからリンの濃度を計算してSN比を決めても良いのである。

 

リンの濃度ではなく、難燃剤の添加量を信号因子にする場合もある。これも難燃化システムの捉え方が異なるだけで、間違ってはいない。技術者がシステムをどのように認識しているのか、と言うことである。

 

リン酸エステルの添加量を信号因子に取った場合には、難燃剤に含まれるリンの量が難燃剤の種類により異なるので解析に注意が必要になるが、それは技術の捉え方の違いの範囲内である。当方はリンの濃度を信号因子に取った方が考えやすいのでリンの濃度を推奨するが、添加量で信号因子をとったほうが考えやすいケースがあるのも事実である。どちらがよいか、それは技術者の責任である、と恐らく田口先生は天国から言われると思う。

 

高分子材料の難燃 化技術においてリンの濃度以外の基本機能を考えても間違いではない。設計しようとしているシステムに対して何を基本機能とするかは、技術者の責任なのである。このあたりは10年ほど前の品詞工学フォーラムの雑誌に竹とんぼの例が載っており、基本機能を考え竹とんぼを作ったがうまく飛ばなかった、というオチが書かれていた。もちろんこの例はタグチメソッドを否定するために書かれた記事ではない。

 

<明日へ続く>

 

カテゴリー : 一般 高分子

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