活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2019.08/17 高分子のプロセシング(34)

高分子の材料強度は、経験的に弾性率と靭性の関数、すなわち強度=f(弾性率,靭性)と表現できる。

 

弾性率はマトリックスとその補強成分で決まり、成形体密度と相関する。しかし、靭性(シャルピー衝撃強度やアイゾット試験データ)は密度に依存しない。

 

 

横軸に射出成形体の密度を、縦軸には弾性率((測定値/100)-10)と曲強度、シャルピー衝撃強度をとり、各種ポリマーアロイと混練条件の異なるサンプルについて物性測定された結果をプロットする。

 

 

得られたグラフにおいて、Y軸に平行なプロットの群は、ある試作条件におけるサンプルについて曲強度、シャルピー衝撃強度を測定して得られたデータの平均値の1セットである。弾性率データは曲強度のSS曲線から採取する。

 

 

ポリマーアロイに配合された成分は皆異なるため、マトリックス主材以外の成分とプロセシングの異なるポリマーアロイに関して強度の密度相関をこのグラフは表している。

 

 

弾性率は主にマトリックスとサンプルの密度で決定されるが、同一マトリックスなのでこのグラフでは密度だけに相関している。

 

曲強度については、弾性率と相関するサンプル群以外に相関しないサンプル群があり、相関しないサンプル群を整理すると衝撃強度に相関している。

 

すなわち、このグラフから経験知である強度=f(弾性率,靭性)と捉えてよい。

 

さらに、このデータは、強度のばらつきは弾性率と靭性のばらつきに支配されている、と読み取ることも可能である。

 

この時、弾性率は密度に依存し、靭性は構造の不均一性(靭性に影響を及ぼすサイズ、800nm以上のサイズ)や欠陥に支配される。

 

このような考察を進めてゆくと、常に一定速度で押し出されているストランド段階のばらつきは、密度あるいは欠陥のばらつきが正規分布で揺らぐと期待され、人手による射出成形では、そのスキルに左右されたばらつきとなることが予想される。

カテゴリー : 一般

pagetop