2013.06/19 科学と技術(混練2)
30年前、混練技術の教科書はハードウェアーの説明書であった。混練したい高分子材料の種類により、どのような混練機を選べば良いか、という説明と、混練機のハードウェアーの説明があれば教科書として充分と思われていたようだ。
高分子材料の設計における混練技術の役割が論じられるようになったのはこの10年ほどのことである。10年ほど前に推進された高分子精密制御プロジェクトは、あまり評価されていないが、アカデミアの成果は大変大きかったのではないかと思う。
例えば、ナノオーダーまでの混練は、伸張流動を利用しなければできないが、剪断流動では、ある構造サイズ以下の材料を製造できないとか言われていたが、実用化は難しいが小さな実験機で高速剪断で混練すればナノオーダーまで到達できることが示されたし、伸張流動でナノレベルの材料を量産できることも実証された。
ところが、剪断流動の成果は、高分子が低分子量化したからナノオーダーの構造になったのであって、とか、伸張流動の成果は、あんなL/Dの大きな二軸混練機は生産機として使えないとか陰口を言われている。しかし、混練技術のレベルにようやく科学が近づき始めたことをなぜ評価しないのだろうか。
高速剪断装置で高分子を混練すると発熱が大きくどうしても分子の断裂が発生するが、この実験結果は、もし発熱の小さい高速剪断流動ならば、どのような混練が進行するのか、という問題を提案している、ととらえることもできる。この問題の答は、分子の断裂が起きず、ナノオーダーまで混練が進む、と考えられる。
また、それを示唆する技術的なコンセプトで行って得られた実験結果もある。すなわち剪断流動では高次構造を小さくできない、と過去に言われていたが、それは剪断速度を考慮していない条件における結論だった。剪断速度が大きく変化したときの剪断流動は、一般の二軸混練機では得られない現象が生じる。高速剪断装置では分子の断裂が起きているので信用できないデータ、という否定的な見方をしている限り、新しい技術は生まれない。未知の世界へチャレンジして得られた結果に問題があったなら、その問題が本当に全ての結果を否定しなければならない問題かどうか慎重に考える必要がある。高速剪断装置の実験結果は新しい技術アイデアを生み出すヒントを示している。
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