2019.10/17 高分子のプロセシング(46)
微粒子(無機フィラーや有機フィラー)とともに高分子を混練した時の分散・分配モデルは、よく整列した白黒の球の配列で示される。
ところが、二軸混練機で混練後のコンパウンドを押し出すと、混練後であってもマトリックスが緩和するまで分散状態は変化する。
例えば、無機微粒子を分散したコンパウンドを押出後、混練機の中で均一に分散していても、押し出したフィルムの冷却速度を変えると分散状態が変化することがある。
この現象は、混練後に組成物が平衡状態になっていないことを意味している。例えば、組成物の自由エネルギー変化を混練時間変化のイメージとして頭に描いてほしい。
あるレンズ用ポリオレフィン樹脂をバッチ式のニーダーで混練した実験では、ポリオレフィン樹脂だけを混練し、一定時間ごとに取り出して、直後に液体窒素で冷却し、冷却後の試料についてTgのエンタルピー変化(ΔH)を測定している。
この実験結果では30分以上混練をしないと、これが一定値にならないという実験データが得られた。すなわち、試料投入後4-5分で吐出される二軸混練機では、1PASSで平衡状態まで混練することができないことを示している。
その結果として、コンパウンドのペレット一粒一粒で分散状態が変化している。極端な場合には、電子顕微鏡でその様子を観察することが可能だが、成形体物性がばらつくことからもおおよそ想像がつく。
中間転写ベルトでは、周方向の抵抗ばらつきが一定でないだけでなく、時々刻々と周期的な変化をすることもあった。単純な押出成形のばらつきでは説明できない現象をコンパウンダーに説明しても分散分配理論で固まった頭では理解できない。
カテゴリー : 高分子
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