2019.11/08 混練時間と分散状態
あるポリオレフィン樹脂(Tgがほぼ135℃で融点は195℃)だけを二軸混練機を模したバッチ式混練機で混錬した時の経験である。
バッチ式なので長時間の混練が可能である。200℃以上の温度では10分間の混練でTg付近のエンタルピー変化が安定化しているように見えた。しかし、そのエンタルピーは190℃以下の低温度で混練した時よりも高い。
すなわち、溶融温度よりも高い温度で混練するとこのエンタルピーは、ある一定値よりも下がらなかった。
但し、190℃以下の低温度における混練(未溶融剪断混練あるいは剪断混練)では、30分以上の混練でTgのエンタルピーは低くなり安定化している。
Tgのエンタルピーは高分子の自由体積の量とも関係しており、この値の低い系が高い系よりも安定しているとみなせるので、30分以上混練をしないと安定化しない、と思われる。
また、溶融温度(Tm)以下の混練では、溶融温度以上の混練よりもエンタルピーが低下する傾向がみられ、このポリオレフィン樹脂を安定な状態まで混練するには、30分以上剪断混練を行う必要がある、とおもわれるような実験結果が得られている。
これは、ポリオレフィン樹脂だけを長時間混練した結果である。二軸混練機では原料の投入から5-6分でストランドが出てくるので、高分子の混練状態が非平衡であるだけでなく、十分な緩和もしないまま、すなわちその状態が訳も分からないまま吐出されている。
これが理解できると少しは二軸混練の技術に対して見方が変わる。この部分を読み、カオス混合装置が欲しくなった技術者は頭の回転が速い。そして弊社へ問いあわせのメールを出した技術者は、仕事が速く良くできる人だ。
カテゴリー : 高分子
pagetop