2013.06/28 科学と技術(混練11)
ゴムを樹脂で補強すると弾性率と損失係数をあげたゴムを設計できる。どのような組み合わせでもできるわけではない。ゴムにゴムよりも弾性率の高い樹脂を混練してゆくと、弾性率が上がるとともに損失係数始めゴムに備わっている他の性質も無くなってゆく。
弾性率だけをあげて他のゴムの物性を生かした材料を設計しようとすると高分子の高次構造の知識が不可欠である。樹脂補強ゴムでは、ただ樹脂が添加されたというだけではなく、30部前後添加された樹脂が海を形成しゴム相が島となる海島構造も影響している。
このことはゴム会社に入って初めて獲得した知識である。大学で高分子物性論も学んだが高次構造が力学物性に影響を及ぼしている、という程度の曖昧な知識しか学ばなかった。レオロジーが大半のその講義では、バネとダッシュポットのモデルから高分子物性を説明し、高分子のクリープについてのモデルが複雑である、という説明であった。
社会人になって、メンターから今のレオロジーでは高分子物性をすべて説明できない、と教えられた。ただ材料技術として捉えたときにクリープ以外の現象を理解するときにバネとダッシュポットのモデルは便利だ、とも。また、粘弾性の測定装置もレオロジーをもとに考え出された機械なので、アカデミアで不要になっても技術として残るのではないか、というのがメンターの見解であった。
大学で学んだ高分子の知識は何だったのだろう、と少し戸惑ったが、業界トップ企業の技術力がアカデミアを越えている現実を知った良い経験である。そしてそれを支えていたのが優秀な技術者集団だった。高分子について一家言持っている“ウルサ型”技術者、“教え魔型”技術者が大切な先生だった。今のようにインターネットで情報を収集できる時代ではなかったので、いち早く先端情報を入手しようと競い合っていった。先端情報をいち早く入手すればドヤ顔ができた時代である。
今情報入手という点では恵まれている。誰でもどこでも情報入手できるユビキタスの時代である。特許でも無料検索できる。その気になれば最低1.5年遅れになるが無料で先端情報を入手できる。お金を払えば半年遅れで入手できる。あとは学ぶ意欲があるかどうかだ。
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