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2019.12/03 レオロジーという学問

高分子へ導電性微粒子を添加した時に生じる体積固有抵抗の急激な変化について混合則を用いて考察を進めていた時代があった。

 

その後、浸透理論による考察すなわちパーコレーション転移の閾値を評価してその現象を理解しようとした変化以上に、高分子のレオロジーに関する研究の内容は20世紀末に大きく変わった。

 

そもそもレオロジーとは、物質の変形及び流動一般に関する学問で、その現象論的目的は、応力(力/面積)と歪(変形量/元の寸法)と時間(周波数=1/振動数)の関係を調べることにある。

 

ところが、高分子の融体は、原子が共有結合でつながった紐状の分子、それも長い分子や短い分子、さらには枝分かれした分子など様々な構造の分子を含んでおり、それぞれの構造の制約を受けながらその場のエネルギー状態に応じてそれらが運動している複雑な物質である。

 

すなわち、一組成の高分子であっても分子一個一個に着目すれば多成分系であり、さらに、その運動を考慮すると分子量や分子の形態に基づく分散を考慮しなくてはいけない多分散系である。

 

そのような複雑な状態の物質が引き起こす現象をダッシュポットとバネのモデルを組み合わせて解析していたのだから、説明できない現象が出てきたとしても当然であるが、形式知としてこのような事態は許されない。

 

まず、高分子のレオロジーについては、今新たな研究が展開されている状況である、という認識を持つ必要がある。

 

すなわち、レオロジーの教科書を読むと粘弾性体についていろいろと難しい理論や計算式が並んでいるが、それらを無理に理解する必要はなく、とりあえず教科書全体を流し読みすればよい。

 

ダッシュポットとバネのモデルは、形式知として時代遅れのモデルであり忘れてしまってもかまわない。

 

ただし、かつて多くの研究者がこのモデルを使って高分子材料を理解しようとした知の遺産と認識し、経験知としてうまく生かして使おうという努力は無駄ではない。

 

このような表現をすると叱られるかもしれないが、そもそも、以前のレオロジー研究者は、ダッシュポットとバネのモデルをいろいろ組み合わせて現象を再現しようと試行錯誤していた。

 

すなわち、それは、あたかも手探りでモデルを探していたような「おさわり感覚」の学問である。

カテゴリー : 高分子

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