活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2019.12/04 レオロジーという学問(2)

(昨日からの続き)そして、高分子材料というものをいろいろな角度から眺め、計算をしてきた実績がある。

 

形式知として問題があるかもしれないが、優れた研究者達による豊富な考察を経験知として借用したくなる魅力がそこにある。

 

現在の形式知で歯が立たない混練分野では、このような経験知でも構わないから少しでも「知識」を身に着けていたほうが、目の前で起きる現象に対して理解しやすい。

ラテン方格を使用した実験を行う時にも、制御因子の取り上げ方に、このような経験知の有無が影響を受ける。

 

すなわち、高分子の科学的研究には役立たないかもしれないが、ダッシュポットとバネのモデルによる現象の捉え方は、その限界を知ったうえで活用すると、実務では便利なツールとなる。

 

もう一つ高分子の理解を難しくしている原因をあげるとしたならば、レオロジーの教科書に書かれた説明である。

 

高分子を粘弾性体として捉える考え方は、弾性変形について固体力学の形式知を、粘性については流体力学という形式知を利用している。

 

この両者の形式知を動員して高分子の変形を考えようとしたのが、過去のレオロジーである。

 

しかし、困ったことに高分子には塑性という変形様式が存在する。金属やセラミックスにも塑性は存在し変形を考えるときの形式知が完成しているが、高分子ではこの塑性が分子1本1本の絡み合いや運動で引き起こされ、大変複雑な現象となって現れる。

 

それを解明しようとソフトマターの物理学が新たに提案されている。おそらく10年後にはこの形式知が反映された今よりもわかりやすいレオロジーの教科書が出てくるかもしれない。

 

今月下旬に発売予定の書では、このようなレオロジーの現状を考慮したうえで、混練を考えやすいよう高分子の運動に力点を置き、その考え方を説明したい。

カテゴリー : 高分子

pagetop