2013.07/03 科学と技術(混練16)
光学用ポリオレフィン樹脂と無秩序性を目指した重合条件のポリスチレンとが混練で相溶し透明になった、という実験事実は、フローリー・ハギンズの理論で説明がつかない。しかし高分子の相溶に高分子の立体構造が関係していることを示す重要な実験事実である。
この実験事実を技術者の心眼で眺めてみると、新しい混練技術の可能性が見えてくる。実験事実は、ポリスチレン樹脂の立体構造をいろいろ変えて重合したら、提灯のような大きな側鎖を持つ光学用ポリオレフィン樹脂に相溶した、という内容である。これを頭の中でイメージしてやると光学用ポリオレフィン樹脂の分子の隙間にポリスチレン樹脂が、スポッと収まっている様子が見えてくる。
この状態と同じ事を混練で実現すれば、光学用ポリオレフィン樹脂と特殊な立体構造のポリスチレン樹脂が相溶したような状況を作り出すことができる。すなわち、異なる構造の高分子をうまくすりあわせて重ね合わせることができれば、相溶できることになる。
もちろんそのような条件で混練してできたポリマーアロイは不安定であるが、樹脂のTgは室温よりも高いので、急冷すれば相溶状態を保持できる。すなわちフローリー・ハギンズ理論のχが大きな樹脂でも混練で相溶させることができ、急冷すればその状態の樹脂を室温で得られるプロセスが設計可能と心眼で見えてくる。ただし、このようにして得られた樹脂は室温でも自由体積部分は運動しているので、混練直後は透明でもやがて失透してゆくだろう。
相溶していた透明な高分子がゆっくりと時間をかけ相分離し失透してゆく、という光景を光学用ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂とが相溶した樹脂で観察することができた。光学用ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂が相溶した樹脂をポリスチレンのTg近辺で温めたら、ゆっくりと失透したのである。ちょうど樹脂がゲートから流れたスジがゆっくりと現れ、その模様が広がり真っ白になったのである。
面白いのはこの真っ白になった樹脂を光学用ポリオレフィン樹脂のTgで温めてやると、また透明になったのである。さらにこれを室温まで急冷したら、透明のままであった。21世紀初めの珍事であった。
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