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2020.01/25 卒業研究

パワハラやセクハラ、モラハラなどハラスメントという文字を見ない日は無い。当方の大学4年時を思い出すと、今の物差しならばアカハラの極みだったように思われる。

 

大学院まで進学するつもりが無かったので、第二外国語の単位を取っていなかった当方は、まず研究室に入った日に助手の先生からその姿勢について叱られた。

 

すぐに雑誌会の資料としてドイツ語の論文を渡された。化学分野を勉強するならばドイツ語の論文程度は読めなくてはいけない、と再度叱られた。

 

教授がその年に退職するのでその研究室で大学院には進めない、と噂されていた。当方は大学院の進学を考えておらず、ただ1年ぐらいは真剣に勉強しようと選んだ研究室だった。

 

厳しい研究室とうわさがあり、教授の退官で研究室が存続するのかどうか不明と言う理由で、第一希望としてこの研究室を選んだのは当方だけだった。

 

しかし、教授から大学院の受験を勧められ、毎朝マンツーマンによるドイツ語の指導が始まった。

 

ありがたいことだが、その気がない学生にとっては地獄である。しかし不思議なもので1ケ月も勉強を続けたら、大学院を受けてみようという気になってきた。

 

卒業研究は、何か合成したいものを選び、その全合成を完成させてアメリカ化学会誌にその成果を発表することと言われた。当時天然化合物の実験室における全合成が流行していた時代である。

 

ちょうど野依先生の不斎合性に関する研究が理学部で盛んに研究されていた時でもある。野依先生からは指導なのか叱られたのかわからないアドバイスを頂いた体験もある。

 

パチンコ屋にはシクラメンの香りが流れていた。そこでシクラメンの香りの全合成をテーマにしたいと申し出た。実験は大変だったが、卒論提出締め切り1週間前に全合成ルートの実験結果と卒論の下書きを完成することができた。

 

ところが、卒業論文の提出締め切り前日に、100報近くの論文を渡され、それをまとめて第一章とするように指示された。

 

指導してくださった助手の先生は、毎日読んでいなかったから悪い、と言われたが、それらの論文の存在を知らされてなかった。

 

4年生ならばみな自分でケミカルアブストラクトを調べて論文を毎日読んでいるが、君は毎日実験しかしていなかった、と叱られた。

 

シクラメンの香りをその研究室の開発した化合物をスタートに合成ルートを見つける作業は難しく、さらに実験量も膨大だった。結局E体とZ体の分離をカラムで行い、何とかゴールまでたどり着いたのが卒論締め切りの1週間前だった。

 

泣いている時間も惜しいので徹夜して100件近くの英文の論文をまとめたが、その自分のパワーと知力に驚いた。アカハラの毎日がパチンコやマージャンの日々から解放し十二分に成長させてくれたのだ。

 

朝の座学のおかげで大学院には無料で進学でき、奨学金もあったのでゴム会社の12年間よりも裕福な二年間を過ごすことができた。先生に感謝している。

カテゴリー : 一般

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