2013.08/28 科学と技術(36:高分子の難燃化技術)
コーンカロリメータの発明により高分子材料の難燃化研究を科学的に進めやすくなった。また、実火災における高分子材料の変化について、発熱量が注目されるようになった。
UL規格はコ-ンカロリメータ発明以前に考案された燃焼試験の規格であり、広く普及している。UL94の燃焼試験を行うと、そのグレード設定の巧みさに感心する。恐らく技術的な見地から高分子の燃焼という現象を段階的に捉えようとしたのだろう。各グレードは、HB<V-2<V-1<V-0<5Vの順で難燃レベルが高くなっている。
試験方法には目視も入っているので感覚的な要素が入り、科学的評価とは言いにくい側面はあるが評価結果に表れる個人差は小さい。また、用いるバーナーやサンプルの事前準備方法など細かく規定されているので私的評価とUL評価機関の評価結果とのズレも生じないようだ
面白いのはV-2合格レベルの試料とV-0合格レベルの試料の炎を接触させた(接炎)ときの変化である。UL94では接炎を2回行う。V-2合格レベルの試料では、2回目の接炎で少し燃えやすくなる傾向に有り、V-0合格レベルの試料ではそれが逆になっている、すなわち2回目の接炎で燃えにくくなっている傾向がある。
燃焼試験を行ってきた経験から、おそらくV-2合格の試料では2回目の接炎で発熱量が多くなっている、と推定される。またV-0合格の試料では、その逆で発熱量が小さくなっていると推定される。これらの推定は燃焼試験を行っているときの試料の燃え方から想像でき、特に5VBに合格するレベルのV-0品では2回目の接炎で驚くほど難燃性のレベルが上がっている。
これはV-0以上に合格するためには高分子材料の難燃化システムとして炭化促進型で設計しなければならず、炭化促進型では燃焼時にチャーが生成するので吸熱反応となり発熱量が抑えられることになる。これらの考察はコーンカロリメータの実験結果と一致している。
そしてこれらは高分子の難燃化技術のあるべき姿の方向を示しているように思う。
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