2013.09/15 ケミカルアタック3
昨日ケミカルアタックは樹脂のSP値と関係があるが、SP値には、計算で求められた値と実験値が混在している話を書いた。そして重要なのは実験値であり、実際にSP値既知の有機溶媒に樹脂を溶解し、正しいSP値を求めて判断する、と説明した。しかし樹脂のSP値では説明がつかないケミカルアタックも存在し、これが現場の混乱の基になる。
樹脂を実用化する場合には各種添加剤が添加される。また樹脂の物性や外観を向上させるために2種以上の樹脂をブレンドする場合がある。このとき油の樹脂への拡散は母材である樹脂のSP値だけでなく添加剤や組み合わせに用いた樹脂の影響を受ける。さらに密度の影響も出てくる。
すなわち現実の樹脂では配合処方によりケミカルアタックという現象が複雑になるわけで、そのため実際にオイルを樹脂に1週間以上接触させた後の引張試験で現物を確認することが重要になってくる。しかしこれは樹脂メーカーの責任で行うべきで、カタログにケミカルアタックを起こしやすいオイル情報を記載すべきである。
そして樹脂に付着しても良いオイルも記載し品質保証すべき問題であるがそのような樹脂メーカーは少なく、ひどい樹脂メーカーになると原因がケミカルアタックでなくとも、ケミカルアタックを原因にして責任回避を行う場合があるので注意をする必要がある。
ここは調達担当が樹脂メーカーに次のようなことを一筆ケミカルアタックに対する対応を書かせておくと良い。すなわちケミカルアタックが発生した場合には、その原因解明に協力し、使用可能なオイルを明らかにします、と約束させるのである。おそらくこのような保証をしてくれる樹脂メーカーは良心的だと思うが、このような約束を条件にコストを上げるメーカーも出てくると思う。
ケミカルアタックは製品設計と現場管理で防ぐことが可能と思われる品質問題である。しかし科学的に発生しうる可能性があるときには対応可能であるが、FMEAに現れない事象で発生した場合には新たな経験として対応するとともに伝承する努力をしなければ防止できない製造現場では厄介な問題であり、一度原因不明な状態になったら5Sの徹底など現場管理が重要となってくる。それでも発生するならば樹脂に問題があるのである。
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