2013.09/16 ケミカルアタック4
破壊原因がケミカルアタックによるものであるか判定することは多くのケースで容易である。すなわち破壊箇所にオイルがついていて、膨潤したようになっていたらケミカルアタックによる破壊である。ゆえに問題が発生したときに樹脂の破壊箇所は解析が終了するまで汚染されないように保存をしなければならない。
破壊箇所についていたオイルを分析してそれがどこから由来したのかを推定し、工程で対策を行う、というのがケミカルアタックの一般的な工程対応の方法である。しかし、破壊箇所にオイルがついていなかった場合にどうするのか。
破壊箇所にオイルがついていなかった場合には、フラクトグラフィーにより破壊原因の解析を行う。そして破壊原因がオイル以外である可能性が高いならば、その対策を実施し問題解決する。オイルが付着し、それが揮発して分析時にはオイルが見つからなかった、というメカニズムではフラクトグラフィーを行った時にその痕跡が見つかる。しかし、その痕跡が見いだされなかったときには、オイル以外の要因を探す。
金型設計も含め成形技術要因であれば、管理された状態で実験を行うと再現可能である。ゆえにこの要因は最初につぶすことができる。難しいのは樹脂起因の場合である。フラクトグラフィーで破壊の起点が樹脂内部にあり、その起点情報から明確に樹脂起因であることが解る場合でも樹脂メーカーとの議論ではへりくつをつけてくる場合があるので慎重に原因解明を進める。
信頼できる樹脂メーカーの場合には彼らの協力を得ながら対策を行うが、信頼できない場合にはまず樹脂材料の問題解析を自分たちで行い、樹脂の問題をいくつか見いだしておく。また、樹脂の製造工程の見学を樹脂メーカーにお願いして実施し問題点の整理をしておく。そして樹脂の問題を明確にしてから樹脂メーカーとの議論を実施すると良い。
汎用樹脂についてはコストダウン競争が激しく日本の樹脂メーカーの中にも誠意の無い会社があるので注意を要する。かつて原材料メーカーの技術サービスは至れり尽くせりであった。しかし、退職前に出会った日本の樹脂メーカーの技術サービスはひどかった。巣のはいった樹脂を納入しながら、また解析結果すべてにへりくつをつけ、現場の混練機のシリンダー温度の異常な状態を写した写真までも無関係とし、樹脂の問題を最後まで認めずケミカルアタック説を押しつけてきたのである。
最後までオイルが見つからなかったケミカルアタックといういやな思い出であるが、「ケミカルアタック」という問題の難しさを示す事例でもある。またこの分野の高分子の評価技術がまだ不完全であることを示す事例でもあり、ケミカルアタックであるかどうかを判定する標準規格が必要である。
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