2013.09/19 電気粘性流体とゴム2
ゴムからの抽出物で電気粘性流体の增粘する問題について昨日からの続き。
開発グループの書棚に市販されている界面活性剤のカタログは、すべて取りそろえてあった。そのカタログ数値の幾つかをピックアップしてデータベースを作成し、多変量解析を行った。主成分分析で界面活性剤の分類も行ってみた。第Ⅰ主成分はHLB値と思われる値になったので、科学的に妥当な分類になっていると推定した。
見つけた界面活性剤について、第Ⅰ主成分と第Ⅱ主成分の軸で整理されたチャートへプロットしたら、ある群と重なった。相談に来た担当者にその群の界面活性剤の検討を行ったかどうか尋ねてみたら、1種類検討したが効果が無かった、という回答。
その群について他のパラメーターも入れて主成分分析を行ったところ、二つに分かれた(相談に来た担当者は運が悪かったのと汗をかきたくなかっただけである)。また第Ⅰ主成分は新たに導入したパラメーターとHLB値の積のような関係であった。この新たに導入したパラメーターは分子量で、高分子界面活性剤の特定のHLB値が問題の解決策を示すパラメーターとして浮かび上がった。
電気粘性流体の增粘の問題は、このように多変量解析を用いて問題解決を行ったが、必ずしも科学的な方法とは言えない。また多変量解析を行う前に、手当たり次第手元にあった試薬を增粘した電気粘性流体に添加して変化を観察している。方法は試行錯誤であり、まったく科学的とは言えない。手元に揃えてあった界面活性剤のキットの中に解があったので、むしろ運が良かったといえる。世間ではこのようにして解決策を得られる人をセレンディピティーがある、というがこんなことは誰でもできる。しかし、徹底してそれを最初から実行する人は少ない。
科学万能の時代では、まず科学的に考えようとする。科学的に考えて解決できそうな問題であれば科学的なアプローチは有効であるが、科学的な解決の糸口を見いだせない場合には、まず実験をやってみる、という姿勢が重要である。知恵のある人は知恵を出し、知恵の無い人は汗をだせ、という名言があるが、汗を出せば何か見つかる。何か見つかったら、その科学的意味を考える。
このような手順では、仮説設定など無い。可能性がありそうな(電気粘性流体の界面活性剤を見つけられなかった人のように、わけの分からないときに仮説で絞り込むと失敗する)手段や方法を「すべて」試してみる。これで兆候が見いだされなければ、「今」自分たちで問題解決できないのである。解決できる問題であれば必ず何か兆候がある。このあたりはヤマナカファクターの発見プロセスが参考になる。何が何でも問題解決したいときには、機能達成手段を無制限に広げ、可能性のある方法からすべて試みる以外に道は無い。コンサルタントや大学教授などの外部の有識者を活用するのも良い方法である。
但し、何か兆候が見つかったときに科学的意味を考えるかどうかは、技術を確立する時間に影響する。科学的意味が解明され、仮説設定できるようになると開発スピードはアップする。科学的に問題解決できるときには仮説設定して問題解決に当たった方が効率が良い。さすがに最初から最後までセレンディピティーでは、時間がかかる。一生運の良い人も稀にいるが、研究開発だけで運を使いたくない。最初に科学的に問題を考察し科学的に解決可能な問題であれば科学的に問題解決して大切な運を次の機会までとっておくこと。
*本日の内容をマジメにそのまま実行しようとすると天文学的時間となることもある。それを効率良くするために弊社の研究開発必勝法がある。ご活用ください。
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