2021.01/19 考える(7)
技術者が考える手順は、開発のターゲットとなっている機能が明確になっている時と、機能が不明確なときでは、後者において機能を明確にする手順が加わる以外は同じである。
開発すべき機能が不明確な場合に、機能を明確にする手順については、後日説明するが、開発すべき機能を明確にする作業は、技術者の責任である。これは故田口玄一先生も指摘されていた。
タグチメソッドは、基本機能のSN比について最適化する手法だが、この時の基本機能については、明確に「技術者の責任」と田口先生は言われ、タグチメソッドの結果が再現しないのは、基本機能が間違っているからだ、と明快に語られていた。
さて、開発ターゲットとなる機能が明確になっているときに、技術者は、機能の動作確認のための実験を行い、「考える」ことになる。
ここが、科学において仮説の真偽を検証するために行う実験とは大きく異なる。科学において、実験結果が実験者の意図しない結果であった場合に、科学者は仮説が間違っている、と結論を下す。
技術者は、実験結果について、良かれ悪しかれ統計的判定か検定もしくはSN比を調べ、期待値と大きく異なれば、再現を確認するかあるいは解析のための実験を行う。
そしてその実験結果について、再度判定もしくは検定を行い、機能の動作が改善されているかどうかを確認する(注)。
以上のように技術者の考える手順は科学者のそれと異なる。また、技術者は常に機能の確認を行うために実験を実施するので、否定証明などと言うばかげた実験に走ることはない。
(注)日々の実験において、経験知から統計的検定や判定を省略する場合が多い。単純に平均値と標準偏差を記載してそれで検定や判定の代わりとしている例も存在する。ここで機能確認の実験後単なる代表値だけ記載するのは、昔の技術者と変わらない。現代の技術者は最低限でも平均値と標準偏差ぐらいは残しておきたい。それらが残せないならば、単なる1回の実験データというコメントぐらいつけておくのが後々の役に立つ。
カテゴリー : 一般
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