2021.01/24 考える(9)
加硫ゴムのケースへ電気粘性流体が封入された時に、ゴムの添加剤が電気粘性流体にブリードアウトして増粘する耐久性問題では、科学者は否定証明を行い、電気粘性流体側で解決できないと結論をだして、添加剤の入っていないゴム開発という信じられない企画を立案している。
I研究開発本部長以下誰もその企画に異を唱えなかった。しかもこれがタイヤでトップを走る研究所で起きた実話なので少し笑えない。しかし、この実話についてゴム会社のために弁解をしておくと、このゴム会社において研究所は雲の上の組織とされており、ゴム会社の技術レベルとは無関係であった。ゴム会社の実務を担当している技術者ならばこのような荒唐無稽ともいえる企画など笑い飛ばす常識を持っている。しかし科学で頭が固まっていると、それが分からない。
当方は、この研究所に所属していたが、毎日居心地の悪い状態だった。当方の考え方が研究所の風土に合わないだけでなく、そのアカデミアよりもアカデミックな雰囲気や考え方を技術者として受け入れることができなかった。
一方で、学会活動のためには、その風土ゆえに活動しやすく、また、難燃剤技術のセミナー講師などをこのころから引き受けていた。
この電気粘性流体の耐久性問題について、当方へ添加剤の入っていないゴムを開発してほしい、と依頼されたときに、おかしな企画だから1週間だけ待ってほしい、1週間で耐久性問題の解決をする、と提案している。
1年以上研究をしてきて、否定証明迄完成させた担当者からは、当方の発言は馬鹿に見えたかもしれない。しかし、当方は真面目に技術で問題をとらえていた。
すなわち、界面活性剤の機能を確認したかったのだ。そこで、研究所に存在していた界面活性剤の類を300種類ぐらい集めてきて、増粘した電気粘性流体に添加して、一晩静置後、300個近いサンプルについて観察(機能の動作確認)を行っている。
すると、増粘が解消され、電気粘性流体の機能が回復したサンプルが見つかった。そこで、その界面活性剤も含め、すべての界面活性剤のスペックについて主成分分析を行い(判定と検定)、電気粘性流体の増粘を回復した界面活性剤の機能について、改善点含めてさらなる改良手段があるのかどうか考えた。
このように技術の「考える」という作業では、機能の動作確認が実験の主たる目標になるので、試行錯誤となる場合が多い。試行錯誤を統計的に効率よく行うためには、ラテン方格を用いる。
タグチメソッドでラテン方格を使うのは、実験計画法をやるためではない。試行錯誤を科学的に行うためにラテン方格を用いているのだ。
カテゴリー : 一般
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