2013.10/05 高分子の難燃化技術とノウハウ(3)
UL94-V2を目標に溶融型で樹脂の材料設計を行った場合にフッ素系樹脂を添加してはいけない。フッ素系樹脂は1%前後添加すると溶融物を抑制する作用を発現する。フッ素系樹脂を用いる場面は炭化促進型で材料設計を行い、ドリップを抑制したいときである。溶融型で添加するとどうなるか、興味のある方は溶融型で材料設計された樹脂に1%前後のフッ素樹脂を添加してみると良い。実験結果はここでは触れない。
溶融型による材料設計の面白いところは、難燃剤を添加しなくてもUL94-V2レベルを通過できる樹脂の設計が可能な点である。難燃剤を添加していないのでLOIは21に到達しないが、これはLOIの試験方法を工夫すると21に到達する。邪道と言われかねないのでこれ以上書かないが、この結果は溶融型による材料設計で実火災の時にも効果があることを示している。
30年以上前、新婚家庭には売れないかもしれないが燃えない寝具を開発していた時に軟質ポリウレタンフォームを溶融型で材料設計した。入社して間もない頃だったので胡散臭い方法と思いながら仕事をしていたが、寝たばこの実験を行ったときにその先入観は吹っ飛んだ。着火するがすぐに自己消火するのだ。タバコ2本でも大丈夫であった。それ以来あさはかな先入観は持たないことにした。
このモデル実験で溶融型による難燃材料設計の有効性を知った。この時は難燃剤が5%添加されていたが、うまく材料設計すれば難燃剤無添加でもいけるかもしれないと思った。しかしテーマが終わったのでそれ以上の検討はできなかった。退職前にPETの難燃化設計を検討できるチャンスが訪れた。30年以上前の思いで材料設計を行ったところ難燃剤無添加でもUL94-V2を通過できる樹脂を設計できた。強相関ソフトマテリアルという概念を用いて材料設計を行い、PETに20wt%程度5種類のポリマーを添加している。5種類のポリマーにはそれぞれ樹脂の機能分担が決まっており、それをバランスさせて材料を完成した。
pagetop