2021.02/02 高分子の難燃化技術を考える(4)
1970年代に高分子難燃化技術について形式知の整備が進んだ。ゴム会社就職前に東北大村上先生らが翻訳された古典的名著も出版されていた。
当方は大学院でこの書を読み、ホスホリルトリアミドをPVAの反応型難燃剤として使用できるようにデザインして、PVAの難燃化に学生時代成功していた。
PVAを難燃化材料の対象に選んだのは、難燃化が難しい高分子として知られていたからだ。当時は一部の高分子について難燃化が成功していた時代で、難燃化の基準も提案され始めた。
極限酸素指数法についてJIS化が検討されており、スガ燃焼試験機が発売された。PVAは環境にやさしい水性塗料に使用されていたので、極限酸素指数法で評価した結果を色材協会誌に論文投稿している。
当時すべての有機高分子材料を不燃化する技術は現実的ではなく、難燃化すなわち燃えにくくする技術が実用的と言う考え方が普及し始めており、そのための難燃化規格が各業界で検討されていた。
難燃二級は建築用の難燃規格として登場して、炎から逃げるように変形する硬質発泡体が、高分子発泡体メーカー各社から発売されるようになった。そしてアカデミアからも炎から逃げるように変形する高分子材料は難燃性高分子材料の一つ、とまでお墨付きがでた。
その結果、極限酸素指数値(LOI)で20にも満たない発泡体で台所用天井材が開発され、1980年になって社会問題化し始めた。ちなみにLOIは1970年代に提案された難燃性高分子材料の評価技術で、1970年末から各国で難燃化規格として検討され始めた。
高分子の難燃化技術について体系的な科学的研究は、1970年頃から始まった、と捉えている。ただし、森林火災についてホスホリルトリアミドのようなりん系化合物を散布する技術は知られていたので、高分子を燃えにくくする技術は古くから存在した。
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