2021.08/03 研究部門のテーマ(1)
連載の最初に現在研究部門のリーダーになられている方には信じられない光景かもしれないが、研究部門のテーマに関わる実話を書く。この理由は、研究部門の、特に事業からの距離が離れている組織では起こりうることであり、また、トップマネジメントからは理解できない、見えないが、テーマ企画担当者の置かれた立場を知るためには大切なことだと考えているからである。
50年以上前に研究所ブームがあり、各企業で研究所が組織された。当方がゴム会社に入社したのは40年ほど前であり、半年後に配属された研究所は、大学よりも恵まれた研究環境だった。
しかし、その職場風土は、半年間の研修で見てきた社内とは異色で、今でいうところのハラスメント(このような概念は無かった)は常態化しており、さらに各グループが秘密主義の状態だった。
この状態は当方が転職するまで続き、当方はFDを壊されるなど単なる精神的なハラスメントを越える、今では社会問題となるような扱いを受けてもそれが隠蔽化された。
また、この事件が起きる前に、半導体用高純度SiCの事業化を進め住友金属工業とのJVとして立ち上げたときに本部長が交代し、新たな本部長から電気粘性流体の業務を手伝うように指示が出たらしい。
ここで、「らしい」とは、新しく着任された本部長から、立ち上げたばかりの事業テーマ以外のテーマを行うように言われた記憶が無いからだ。
電気粘性流体のプロジェクトリーダーから、電気粘性流体用の加硫剤の入っていないゴム開発を命じられた時に、「本部長指示」と明確に告げられただけである。なぜそのリーダーに指示されなければいけないのか不明でもあった。
しかし、このプロジェクトリーダーに電気粘性流体に関してレクチャーを求めても関連する文献も含めて情報を一切見せてもらえなかった。
ただ、電気粘性流体の耐久性劣化が、そのケースとして用いるゴムから添加剤がブリードアウトするためと分かっているので、加硫剤等添加剤の入っていないゴムを開発せよ、と命じられただけだった。
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