2013.10/18 混練のノウハウ(5)
混練は伸張流動と剪断流動で混合を進めるプロセスである。前者の混合効率は悪いが微細化に効果があり、後者の混合効率は高いが分散の微細化に難点がある、と教科書には書かれている。
ロール混練では、ただ二本のロールを用いているだけであるが、剪断流動も伸張流動も発生している。面白いのは慣れてくると分散状態が目に見えるような錯覚にとらわれる。またL/Dとスクリューセグメントの制約がある二軸混練機に比較し、混練の制約がロール混練には無い。コストは上がるがオープンロールでは長時間混練しても高分子へのダメージは少ない。
バンバリーとロールによる混練はバッチ操作であり、生産効率が悪い。連続生産可能な二軸混練機の発明以来、加硫ゴム以外の高分子の混練にはほとんど使われなくなった。しかし、樹脂や熱可塑性エラストマーの混練に使用できないわけではない。もし樹脂や熱可塑性エラストマーの混練レベルに不満があるのなら、一度オープンロールを用いたロール混練を試してみると良い。二軸混練では得られないレベルの混練物ができる。
セルロースをポリエチレンに分散するにあたり、二軸混練機を用いるとセルロースの含有率を30%以上にあげるのが難しくなる。剪断力が不足するためで、この剪断力不足を解決した連続式混練機KCK(俗称石臼式混練機)が発明された。しかし、このKCKを用いても40%前後が限界である。
ノンプロ練りをバンバリーで行うと80%レベルまで分散することが可能となる。プロ練りをオープンロールで行うと、ポリエチレンに50-55%のセルロース含有率でポリスチレン同等の複合材料が得られる。この実験から、二軸混練機などの連続式混練機の位置づけがご理解頂けるのではないかと思う。
KCKはかなり剪断力を高く発生させることが可能な連続式混練機であるが、バンバリーにはかなわない。また長時間高分子を安定に混練できる、という点においてオープンロールによる混練に勝る方法は無い。
しかしプロセスコストが高くなるのですべてバージン材を用いてポリスチレン並の複合材料を製造してもメリットは無いが、ポリエチレンやセルロースの廃材を用いれば価値が出てくる。かつてフィルムの樹脂缶はポリエチレンでできており、ラボから大量に入手できた。また印画紙の廃材やオフィスの廃ペーパーも大量に工場から入手できた。もう近所に写真屋さん45も無くなり、銀塩フィルムを使う機会も大幅に減った。この技術はアナログ時代の話である。
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