2013.10/19 混練のノウハウ(6)
二軸混練機を用いた場合に、教科書に書かれているような使用方法ではバンバリーとロール混練によるバッチ操作以上に混練を進めることが可能なプロセス設計は難しい。しかし、この連続式混練機の改良努力は現在でも行われている。
例えば量産設備は難しいが、10年以上前に開発された毎分1000回転以上の高速混練機で、剪断流動でもナノオーダーの分散を実現できることが示された。またポリマーアロイの研究者として有名なウトラッキーの開発したEFMでは既存の連続式混練機の先に取り付けるだけで伸張流動によるナノオーダーの分散が可能である。但し何段階もの細い隙間を通す必要から量産性は無い。
ウトラッキーは細い鋭利な隙間で発生する伸張流動に着目したが、隙間がある距離で並行に続くと壁面では剪断流動となる。すなわち隙間を広げれば壁面で発生する剪断流動でウトラッキーの装置よりも吐出量を上げた混練が可能となる。この点に着目して写真会社から連続式混練機の先に取り付ける新しい混練装置が特許出願された。
この方法の面白いところはカオス混合と類似の現象が発生している点である。実際にこの装置を用いると混練レベルを大幅に上げることが可能で、特許にDSCのTg変化で示したようにPPSと6ナイロンが相溶する。このアイデアの改良を現在も続けているのでご興味のある方はお問い合わせください。
さて、連続式混練機のもっと面白い使用方法は無いかと調べてみると、詳細のノウハウは開示されていないが、ベント孔から粘土鉱物のスラリーを樹脂の流動方向と反対に流し込み他のベント孔から水を水蒸気として取り出す力業を見つけた。この方法で粘土鉱物を樹脂にナノオーダーで分散させることに成功している。
粘土鉱物は層状構造なので高い剪断流動で容易に劈開する。また、層間にアミン類をインタカレーションさせて劈開しやすくした粘土鉱物もナノフィラーとして販売されている。またこの変性粘土鉱物は変性剤の種類により樹脂に分散しやすくできる長所がある。
配合処方の工夫とプロセシングの改良により連続式混練機の混練性能を上げることが可能であるが、L/Dの制約で混練時間の問題が残る。しかし、これも複数回連続式混練機を使用すれば解決がつくのでバンバリーとオープンロールの組み合わせに迫る混練プロセスを連続式混練機で行えるようになってきた。また、ラムスタットミキサーと呼ばれるバッチ式と連続式を組み合わせた新しい混練装置も4年前に開発された。
今年の高分子自由討論会では、キャピラリーの樹脂流動で発生する壁面の現象に関する発表があった。写真会社で出願された特許の現象を支持する実験結果が得られていた。ラムスタットミキサーでは伸張流動で混練が進むと説明されていたが、壁面で発生してる剪断流動により混練が進んでいる可能性がある。
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