2021.04/18 工場火災(2)
半導体工場の火災について、ネットには安全保障に関係する噂話が増えている。確かに米中関係の現状から、そのような推定は、話として興味深いかもしれない。ご丁寧にも工場火災によるシェア変化の予測まで出されている。
思い出されるのは福島原発の爆発である。工場設計の視点で、いくつものミスが見つかった。例えば外部補助電源車のコネクターに合わないコネクターが使用されており、外部電源を使用できず暴走を止められなかった、とか一部モニター機器のコードが最近の工事の時に外され、そのままだった、とか予備電源のモーターが低い場所に置かれてすぐに水没して使えなかった、とか、少しお金をかければ大事故を防げたかもしれない、工場の設計ミスがいくつも出てきた。
本来ならば工場長とか東電社長の責任が問われなくてはならないが、あまりの事故の大きさにだれも責任をとれない、として東電社長まで無罪となった。そもそも社長の職責として企業活動が社会に影響を与えたときには相応の責任を取らなければいけないことになっているが、自らの責任について語らない。
50年近く前の化学工学の授業では、このような災害に対する備えの話について、天井や屋根を壊れやすくする対策程度しか出てこなかったが、当方のプラント設計における指導ではFMEAを使用し、経済効果を踏まえたうえで対策をしている(注)。
FMEAをバカにする科学者もいるが、今回の半導体工場や福島原発の事故を見ると、絶対にFMEAで事前に検知できた事象が存在し、それが主原因ではないにしても、災害の影響を軽微にした可能性があるので、FMEAは重要だと思う。
FMEAは、科学者がバカにするような簡単な作業(転職した時のゴム会社の研究所のリーダーは「そんなもの」という表現をされていた)である。しかし、簡単な手順なので誰でもできる手軽さがある。そしてそれを日常活用することにより大事故の影響を軽微にできるので、使わなくてもよい、という判断は間違っている。
半導体工場の火災や福島原発の検証結果を読むと、FMEAの重要性が浮かび出てくるが、それが本質ではない、という理由を信じる人が多く話題になっていない。
しかし、福島原発の実況放送を多くの国民は見ており、本質が災害を軽く考えていた、あるいは単なる確率関数で考え備えを軽視していた、点が報道されているので、FMEAは災害対策の一つとして重要と言う考え方は間違いではない。
(注)15年ほど前にコンパウンド工場を建設した時に、予算に厳しい上限がついたため、安全対策だけでなく、生産装置を中古機を集めて手作業で作り上げるなど苦労した。しかし、10年以上前の中古の混練機を導入したはずだがそれがまだ特許に公開したカオス混合装置として順調に稼働しているという。新品を導入したような結果は、FMEAの成果である。
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