2021.04/23 アイデアの出し方(5)
ジャズのアドリブの方法論には、プレイヤーにより様々な考え方があるらしいが、共通しているのは、「無い袖は振れない」ということで、日ごろのリックの仕込みが無い限り、聴衆が興奮するようなスリリングなアドリブを瞬間芸的でありながらコンスタントにプレイすることは難しい。
技術開発におけるアイデア創出についても同様で、形式知だけであれば、文献で調べるなり、アカデミアの先生に聞けば一応のアイデアを出すことが可能であるが、このような形式知に基づくアイデアは、誰もが同じアイデアとなりおもしろくない。
なぜなら、科学の形式知とは論理学的に必要十分な関係となっている知識の体系であり、その知識のつながりは1:1となっているからだ。この保証があるので科学的研究の意味があり、科学にサポートされて技術が急速に発展した。
しかし、未だに自然現象を100%完璧に科学的知識の体系で記述できているわけではない。科学的に未解明の現象は多い。例えば高分子の相容あるいは相溶現象に関する知識の体系は科学的に見えて実際には科学ではない。
おおよその現象はフローリー・ハギンズ理論で間違いないかのように見えるが、この理論は二次元の漫画から想定した式をベースに展開されているので、3次元ではどうなるかとか、異なる分子同士を並べる現象が自然現象ならばどのように起きているのかなど説明されていない。
また、この説明されていない部分は、技術者が勝手に想像しなければいけないことを教科書では断っていない。これはその昔、サンタフェという写真集がイノベーションを起こし、モザイクが消えたときの社会現象と似ている。
本来写っているべきものがうつっていない時にそれを真実だと信じていた男性が多く困った女優が、「あれはモザイクの代わりに写真を処理してもらった」と週刊誌で言い訳をしていた。わざわざ言い訳をしたものだからさらに写真集は売り上げを伸ばした。
例えがやや下品になったが、フローリー・ハギンズ理論でも二次元の仮説から式を導いている言い訳を教科書に載せたならば、高分子の相容あるいは相溶現象に関係する材料技術は、写真集が売り上げを伸ばしたようにさらに進化すると思っている。
これは当方の経験で申し上げている。当方が開発したカオス混合装置は、妄想の結果の発明品である。しかし、フローリー・ハギンズの理論では相溶しないとされるPPSと6ナイロンを相容させることができた。
これは妄想の中のたわごとではない。15年近く前にこの材料で商品の生産立ち上げをして、現在でも安定して生産が続けられている。すなわち、科学的には成立しない商品が品質としては安定だったので製品として販売され続けている。
もしこの商品をリバースエンジニアリングで科学的に解析した優秀な研究者がいるならば、びっくりしているかもしれない。高分子学会賞の審査会でも信じてもらえず落選しているが、高分子学会主催ポリマーフロンティアに招待講演者として招待され会社からも許可されたので、一連の技術について講演している。
カテゴリー : 一般
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