2021.05/01 小さなイノベーション
転職してびっくりしたことは多い。企業によりその風土の異なることは覚悟していたが、研究開発部門でありながら「企画をやりたい」と申し出る人が多かったことである。ゴム会社で受けた研修では、日々の仕事に革新の意欲をもって取り組んでほしい、と教えられた。
「かくしん」には「確信」もあるので聞き間違いだろう、と言われると困る。話の前後から、また研修内容から「革新」すなわちイノベーションであることは間違いない。当時イノベーションと言う横文字は今ほど使われていなかった。
そもそも、研究開発部門では、毎日の仕事にイノベーションの要素が必要なだけでなく、一つ実験を行う時にもそこには企画の要素が入ってくる。
そこが理解できておれば、企画部門に異動したい、などという不満が多くの人からでてこないはずだ。ところがいろいろ話を聞いてみると、日々の仕事は混ぜて塗っての繰り返し、と言うのである。大学院まで出てきた高学歴の社員が作業者のような感覚で仕事に取り組んでいたのだ。
確かに塗布技術において処方開発では、混ぜて塗っての繰り返し業務が増えるのは仕方がない。しかし、配合設計には、日々イノベーションが求められていることを理解していない。
そもそも配合設計という技術分野があることを転職した部門では、あまり意識されていなかった。タグチメソッドのブームの始まりの時期であり、イノベーションを起こすには転職者として良いタイミングだった。
ゴム会社で3か月防振ゴムの開発に取り組んだが、そこではダッシュポットとバネのモデルによるシミュレーション結果と配合設計技術とのつながりの悪さをつなげる工夫が必要だった。
すなわち科学的に研究開発を進めなければいけない環境において、技術開発をどのようにしてその香りにするのか、日々イノベーションが求められた。
今では素直に科学と技術では実験のやり方が、また現象の捉え方が異なる、と指導できる。しかし、20世紀の科学の時代には、猫も杓子も「科学、科学」と叫んでいた。大切なのは社会にイノベーションを起こしうる技術開発なのだ。科学は一つの哲学に過ぎない。
カテゴリー : 一般
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