2012.09/08 酸化スズゾルの帯電防止技術から学んだこと(3)
酸化スズゾルを用いた帯電防止技術をテーマに田口先生からタグチメソッド(以下TM)の御指導を受けているときに、TMの実験結果を科学的に検証しながら進めたい、という提案をしましたら叱られました。TMだけで開発を進めれば良い、とのこと。結局御指導期間中は研究を行わず、田口先生から解放された後、すなわち製品開発完了後に酸化スズゾルのパーコレーションの研究をヤミ研として進めました。その結果は昨日述べたとおりです。
「高分子材料のツボ」セミナーには、パーコレーション転移の紹介に、日本化学会で発表した酸化スズゾルのデータを使用していますが、近々パーコレーション転移だけのセミナーも販売する予定です。パーコレーションに関してはスタウファーの書籍が有名ですが、高分子材料におけるパーコレーションの良書が見当たりません。現在のところセミナー形式で販売を予定していますが、もし皆様のご希望があれば書籍の形態に変更することも考えています。
ちなみに「高分子材料のツボ」セミナーに関しては書籍の形態希望のメールが届いており現在検討中ですが、今回のセミナーの形態にしました理由は、ポイントだけを反復して眺めるのに便利ではないか、と考えたからです。高分子材料開発において、高分子科学全体を頭に描いていた方がアイデアが豊富に出る、と思っています。よく高分子を勉強された専門家ならば「高分子材料のツボ」は必要ではないでしょうが、10年セラミックスの研究開発を行っていた技術者が高分子材料の開発を担当しましたので、最初のテーマとしてにPETフィルムの帯電防止技術を担当しましたときには大変でした。「高分子材料のツボ」はこの時から作り始めたメモが大半の内容を占めております。
「高分子材料のツボ」セミナーは、弊社のコンサルティング活動におきましても教科書的な位置づけで使用しています。20年前からメモしてきました内容を見ながら、温故知新の気持ちでコンサルティングを行っています。面白いことに、同じ科学的事実でも、その現象が現れる環境が異なると、新鮮に見えることがあります。「高分子のツボ」を見ながら、新しく見える理由を考えてゆきますとアイデアがわいてきます。
酸化スズゾルの技術は1960年の公告特許がもとになっていますから、まさに温故知新の産物ですが、科学的情報を過去のものと捉え、目の前に現れた現象を新しいと感じると、温故知新の教えを生かして、アイデアをひねり出すことができます。そのコツは、周辺の科学的知識を整理しておくことです。新しさを具体化するためには、古い科学的知識を明確にしておく、すなわちどこまでわかっていてどこからわかっていないのか、あるいはその理論がどのように生まれたのか、などをきちんと整理しておく必要があります。
最近「歴史地震学」が注目されていますが、3.11が起きる前にこの学問が温故知新の観点で整理されていたならば、もう少し被害を小さくできたのではないか、と悔やんでいます。古文書には地震の情報が少ないと言われていますが、地層には動かぬ証拠が眠っています。その証拠と古文書を科学的に対照させれば、豊富な地震情報になるのではないでしょうか。酸化スズゾルを用いた帯電防止技術では、ヤミ研ではありましたが、温故知新という言葉を味わいながらパーコレーションの研究をまとめることができました。
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カテゴリー : 高分子
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